著者
刈部 博 林 俊哲 平野 孝幸 亀山 元信 中川 敦寛 冨永 悌二
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.965-972, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
54
被引用文献数
10 5

高齢者頭部外傷は予後不良とされ, 病態の解明, 治療法の開発, 予防への取り組みは, 高齢化社会を迎えた本邦における喫緊の課題である. 本稿では, その特徴と問題点について言及・考察する. 高齢者頭部外傷は運動機能や生理機能の低下による転倒・転落が多い. 急性期頭蓋内病変では急性硬膜下血腫の頻度が高く, 血腫量が多いことが特徴で, 加齢による硬膜下腔の拡大など解剖学的特徴に起因する. また, 遅発性頭蓋内血腫や脳血流変化など, 解剖学的・生理学的特徴に関連する病態も高齢者に特徴的である. 近年普及した抗凝固・血小板療法は, 頭蓋内出血増悪の一因であり, さらに治療を困難にしている. 今後, さらなる研究が期待される.