著者
中川 敦寛・冨永 悌二 大谷 清伸 富田 博秋 久志本 成樹 Rocco Armonda
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.441-446, 2016-12-15 (Released:2016-12-15)
参考文献数
25

爆風損傷は爆発に伴い発生する爆風に暴露され生じる.一般の臨床医が経験する外傷機転に加えて,衝撃波を伴う圧損傷が複合的に生体に影響を及ぼし,損傷が発生する.イラク戦争,アフガニスタン紛争以降,爆風損傷が著しく増加し,軽症例における高次脳機能障害,心的外傷後ストレス障害の頻度が高い可能性が示唆されたことから,新しい疾患概念として認識されるようになった.眼,耳,肺,消化管,心臓血管系の損傷も特徴的であるが,受傷早期に顕在化しないことがあり注意が必要である.外傷初期診療ガイドラインに沿った対応を行うとともに,損傷時の状況の把握を含めて衝撃波を伴う圧損傷のリスク階層化と病態を考慮した治療を行う. テロや産業事故による爆風損傷は遠い存在ではなく,わが国においても救急に携わる医療従事者,関係者も病態と診断・治療に関する一定の知識を持っていることが望ましい.
著者
中川 敦寛 工藤 大介 園部 真也 麦倉 俊司 久志本 成樹 冨永 悌二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.955-963, 2021-09-10

Point・現在の神経集中治療では二次侵襲を最小限にとどめ,生体の自己回復能力を最大限に引き出す環境を作ることに主眼が置かれている.・神経学的所見やモニタリングから得られる情報を統合し,頭蓋内圧亢進を的確に評価して治療のタイミングを逃さない.・今後,インフォマティクスなどがモニタリングや管理の質の向上を支援することが予想されるが,生理学,病態生理を深く理解することが本質であることには変わらない.
著者
刈部 博 林 俊哲 平野 孝幸 亀山 元信 中川 敦寛 冨永 悌二
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.965-972, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
54
被引用文献数
10 5

高齢者頭部外傷は予後不良とされ, 病態の解明, 治療法の開発, 予防への取り組みは, 高齢化社会を迎えた本邦における喫緊の課題である. 本稿では, その特徴と問題点について言及・考察する. 高齢者頭部外傷は運動機能や生理機能の低下による転倒・転落が多い. 急性期頭蓋内病変では急性硬膜下血腫の頻度が高く, 血腫量が多いことが特徴で, 加齢による硬膜下腔の拡大など解剖学的特徴に起因する. また, 遅発性頭蓋内血腫や脳血流変化など, 解剖学的・生理学的特徴に関連する病態も高齢者に特徴的である. 近年普及した抗凝固・血小板療法は, 頭蓋内出血増悪の一因であり, さらに治療を困難にしている. 今後, さらなる研究が期待される.
著者
刈部 博 林 俊哲 成澤 あゆみ 赤松 洋祐 亀山 元信 中川 敦寛 冨永 悌二
出版者
一般社団法人 日本神経救急学会
雑誌
Journal of Japan Society of Neurological Emergencies & Critical Care (ISSN:24330485)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.1-8, 2018-06-01 (Released:2018-11-15)
参考文献数
21

In this study, eleven cases with sports-related traumatic occlusive cerebrovascular accident (OCVA) are investigated to clarify clinical characteristics by reviewing following clinical factors: age, gender, mechanism of trauma, symptom, type of sports, duration between the time of injury and outpatient visit or diagnosis, type and site of vascular injury, co-existent traumatic intracranial lesion, treatment, and outcome. Traumatic OCVAs were accounted for 9.1% of sports-related TBI, as 1.1% of other TBIs than sports-related. It is more common in male than female. Histogram of age distribution demonstrated a peak at the age of 5-14 y.o. Cervical hyperextension and/or hyper-rotation was the most common mechanism of injury. Head and/or neck pain immediately after trauma was the most common initial symptom. The most frequent vascular lesion was an arterial dissection of internal carotid or vertebral artery. Antiplatelets or anticoagulants were introduced for treatment in cases without traumatic intracranial hematoma. Favorable outcomes were obtained in most cases, however, permanent neurological deficits were remained in 3 cases. Since delay in the introduction of treatment results in poor functional outcome, an early visit of outpatient are quite important in patients with sports-related traumatic OCVAs, as well as the standardization of diagnostic algorithm.