著者
庵谷 尚正
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.169-174, 2015 (Released:2015-10-31)
参考文献数
11

TURisは当初,閉鎖神経反射やTUR反応を回避する目的で,導電性で点滴可能な生理食塩水を潅流液にすることで開発された.その過程で非常に鋭い切れ味を有することが分かり,特にTURBTに於ける有用性が評価されて現在多くの施設で使用されている.従来のTURでは生体との接触点にしか起こらないアーク放電がTURisではループ全体に発生し,しかも生体とループの接触状態によらず安定し持続することがTURisの鋭い切れ味の要因である.アーク放電はループ周囲を包むように発生した気泡内で生じており,アーク放電を開始させるためにはまず気泡を生成しなければならない.実際には,通電してもアーク放電が発生しない放電ミスの原因が起こったり,通電後すぐにアーク放電が起こらず突沸を伴った放電が起こって予想外の深い切開の原因となることもある.TURisの電源には種々の改良が加えられ,気泡生成からアーク放電成立までの過程がスムーズに進むようになってきたが未だ十分とは言えず,second TURなど膀胱壁の層構造を意識したより繊細なTURBTがもとめられる状況では,この原理を理解することが必要と考えられる.従来のTURとTURisを比較してこれらの原理,要因について解説した.また,TURisの止血,凝固における特性や突沸の問題,発生するガス等についても言及した.