著者
飯田 浩二 康 燉赫
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

本研究課題である"計量魚群探知機を用いた日本海におけるスルメイカの資源量推定の高精度化に関する研究"の2段階目として,平成15年4月から平成16年3月までの研究進行状況および概要を以下に述べる。1.2003年6月,北海道の南西海域である奥尻島周辺において,北海道大学練習船うしお丸搭載の38,120,200kHzセンサーにより,スルメイカの音響データを収集した。3周波数で得たデータは,周波数別のスルメイカの音響散乱特性を基準として,エコーグラム中でスルメイカのみを抽出するために,2周波数間の体積散乱強度差法を利用して,分析用である。2.2003年7月,北海道大学野外実験場において,18個体の生きたスルメイカを利用して,27時間,自由遊泳状態の遊泳角度を測定した。この測定結果は,スルメイカのTS算出および現場での音響データ解析における重要なパラメータとして適用可能であろう。また,外套長15-19cmの生きたスルメイカのTSを,70,120kHzのセンサーを用いて,姿勢角と共に測定した。3.2003年11月,"time of flight method"によりスルメイカ体内の音速を,重量と体積から密度を測定した。また,超音波カメラを利用して,スルメイカ体内の構造を観察した。この実験結果は,スルメイカTS推定のための音響散乱モデルにおける重要なパラメータとして利用可能である。4.2003年12月,韓国麗水大学の海水水槽において,麻酔したスルメイカを用いて,姿勢角変化に伴うTSの変化を,38,120kHzのセンサーにより測定した。生きている状態での実験はTS備に偏りがあるため,任意の角度でスルメイカを固定して得た正確なTSは,自由遊泳状態のTS実験結果を補充できる。全般的に事前に計画した実験は実施したが,生きたスルメイカを扱わなければならないため,海上実験において多くの資料を得るのが困難であった。平成16年には1,2年目に得られた資料の不足分を補充し,得られた資料から研究結果報告書および論文を作成する予定である。