著者
廣川 祐司
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科
雑誌
人間・環境学 (ISSN:09182829)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.97-109, 2011-12-20

平成21年10月27日に山梨県の甲府地方裁判所において,同県身延町における「入会権不存在確認請求訴訟」の判決が出された.係争事案は一般・産業廃棄物管理型最終処分場の建設計画をめぐり,建設賛成派住民(原告)が建設反対派住民(被告)を提訴したものである.建設予定地の一部にはK集落(K組)の入会地が含まれており,入会権の存在を根拠に反対派住民が建設反対活動を行っている.そのため,建設を推進する賛成派住民が,当該係争地には「入会権は存在しない」ことを確認するために提訴した.本係争地は記名共有によって登記されている土地である.このように入会地を記名共有で登記し保持し続けている地域は数多くあり,本係争事例を検証することによって,記名共有登記制度が入会を担保するための受け皿として十分でないことを提示するのが,本稿の主たる目的である.