著者
小林 伸行 濱川 文彦 金澤 嘉昭 廣松 矩子 高野 正博
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1380-1385, 2015-12-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
3

目的:排ガス(おなら)臭を主訴とする自己臭症の患者における腹部症状を質問紙を用いて調べた.対象と方法:当院心療内科を初診したおなら臭を主訴とした自己臭症患者47名(男性20名,女性27名,平均年齢27.7±12.4歳,以下,自己臭群)と健常者82名(男性48名,女性34名,平均年齢37.3±9.7歳,以下,対照群)を対象とした.当科初診時にRomeIII診断基準に基づいて作成した問診票を用い腹部症状を調査した.結果:過敏性腸症候群(IBS)の診断基準を満たしたのは,自己臭群25名(53%),対照群17名(21%)と自己臭群で有意に高頻度であった(p<0.001).自己臭症とIBSを併存するものは対照群のIBSと比較していきみ,排便困難感,残便感の頻度が高かった(すべてp<0.001).自己臭患者の中でIBS患者と非IBS患者を比べると排便困難感がIBSで高頻度であった(p<0.05).結論:おなら臭を主訴とする自己臭症には高頻度でIBSを併存していた.今後,下部消化管の機能異常の解明により自己臭症の病態理解を促進すると考えられる.