- 著者
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廣瀬 慧
- 出版者
- 九州大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2009
今年度は,まず,因子分析の変数選択に関する研究を行った.因子分析モデルにおける変数選択は,例えば,社会科学,心理学の分野では,アンケート調査でどのアンケート項目に基づいて分析を行うのがよいかを決めるために必要となる.また,ライフサイエンスの分野では,数万の遺伝子の中からどの遺伝子が癌などの病気の原因となるのかを発見する際に重要な役割を果たす.そこで,L_1型正則化推定法に基づいた新たな変数選択法を提案した.因子分析モデルでは,各変数に対応する因子負荷量が複数あるため,通常のlasso推定法にあるような,係数1つ1つに対してスパースな解を導く罰則項を適用すると,適切に変数選択を行うことができない.そこで,複数のパラメータをグループとみなし,グループごとに変数選択を行うGroup Lassoを導入した.提案したモデリング手法をKendall(1980,Multivariate Analysis(2nd. ed.)Charles Griffin)の求人データに適用し,観測変数の背後に潜む因子を明らかにした.構造方程式は,分析者が観測される多変量データの複雑な因果構造に関する仮説を立て,その仮説から現象の因果を検証することを目的とする多変量解析手法で,心理学,社会科学生物学や医学など諸科学の様々な分野で応用されている.このモデルに含まれるパラメータを最尤法で推定すると,推定が不安定となりやすく,特に誤差分散の推定値が負となる不適解問題が発生することがあり,解決すべき重要な問題として知られている.この問題に対処するために,ベイズアプローチに基づくモデルの推定を行った.パラメータの事前分布として,Akaike(1987, Psychometrika, 52, 317-332.)の事前分布に基づいて,新たな事前分布を提案した.さらに,事前分布に含まれるハイパーパラメータの値を選択するために,モデル評価基準を導出した.提案した一連のモデリング手法を個人消費低迷の原因についての因果分析の実データに適用し,その特徴と有効性を検証した.