著者
江木 伸子 廣瀬 理恵子 平尾 和子 野田 誠司 齋尾 恭子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00088, (Released:2023-06-05)

大豆分離タンパク質 (SPI)の部分的酵素加水分解が乳化安定性に影響することは既に報告されている.著者らは市販の部分的加水分解された大豆タンパク質素材を用いて,乳化安定性の高いエマルションの調製について報告した.本報の目的は,数種の熱帯果実の果汁をSPIに直接反応させることにより,SPIから保形性および安定性の高いエマルションを調製することである.その結果,パイナップル,キウイ,イチジク,メロン,パパイア(未熟)の果汁をSPIと反応させることにより,擬塑性流動を示し,保形性のある安定なエマルションを,パパイン酵素と同様に調製できることを明らかにした.本研究の範囲において,果実の種類,産地,熟度,果汁とSPIの反応条件により,エマルションの外観,SDS–PAGEによるタンパク質分解物のパターン,流動曲線による物性等が変化した.電気泳動パターンでは11Sの酸性サブユニットの消失とエマルションの安定性との関係が示唆された.
著者
江木 伸子 平尾 和子 廣瀬 理恵子 斎尾 恭子 村上 昌弘
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.225-235, 2016-05-15 (Released:2016-06-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

分離大豆タンパク質(SPI),酢,大豆油,水の乳化により調製した大豆タンパク質添加エマルションのレオロジー的性質を酢の添加量および添加順序を変えて調べた.その結果,部分的加水分解したSPIは,乳化後,酢を添加することにより,元のSPIに比べて,高い保形性および安定性と滑らかな物性を持つエマルションを調製できることがわかった.SPI,大豆油および酢と水の適当な配合比を調べるために,Schefféの単純格子計画法を適用して,10種類の配合比で作られるエマルションの物性を検討した.安定した保形性を持つ混合比は部分加水分解SPI ; 4.0∼16.7%,大豆油 ; 36.0∼55.0%,酢 ; 5.0%,水 ; 36.0∼45.5%の範囲にあり,これらは擬塑性流動を示した.チキソトロピー特性値,降伏値,粘稠性係数,流動性指数などの値は混合比により変わり,ホイップクリーム様,マヨネーズ様,クリームチーズ様などの乳化特性を示した.混合比が部分加水分解SPI ; 10.4%,大豆油 ; 42.3%,酢 ; 5.0%,水 ; 42.3%のエマルションは,それが大豆たん白利用食品として相応のタンパク質含量を持ち,平均粒子径や流動性指数など物性値が適当なことから後の実験に選択した.このエマルションに砂糖を添加すると,砂糖の添加量が多くなるに従いニュートン流動を示すようになり保形性は失われた.しかし,砂糖を加えて乳化してから,酢を添加することによりエマルションの形状の変化を抑制することができた.またこのように調製したエマルションは焼成することが可能になったので,焼成菓子やマヨネーズ様食品を試作した.これら実験を通じて,著者らは食材を添加する順序が顕著に,かつ,微妙に調製後のエマルションや食品の物性に影響することを認めた.