- 著者
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中西 浩三
野田 祐司
白日 高歩
宮崎 一博
廣田 暢雄
- 出版者
- 日本肺癌学会
- 雑誌
- 肺癌 (ISSN:03869628)
- 巻号頁・発行日
- vol.31, no.6, pp.943-949, 1991-10-20
SIADHを合併した肺燕麦小細胞癌の患者で, 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が高値を示した症例を経験した.咳噺, 発熱のため入院.検査所見では血清Na値が114mEq/lと低く, 血漿浸透圧も233mOsm/lに低下していた.同時に測定されたANPは157pg/ml(正常値<10pg/ml)と高値を示した.脱水症状はなくて腎機能も正常であり, 肺小細胞癌によるSIADHと診断した.高張食塩水負荷試験に心臓カテーテルを併用した検査を行った結果, ANPが腫瘍からではなく心筋から放出されている可能性が示唆された.実学的治療が行われ, 腫瘍量の減少にともなって低Na血症は改善した.切除された腫瘍の抽出液からは高濃度のADHと微量のANPが検出された.SIADHにおける低Na血症は, ADH異所性産生, 循環血液量増加, 心房内圧上昇, ANP放出, Na利尿という機序で起こるものと考えられた.