- 著者
-
廣田 美里
松葉 祥一
橋本 健志
- 出版者
- 一般社団法人 日本看護研究学会
- 雑誌
- 日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.2, pp.2_13-2_23, 2016-06-20 (Released:2017-01-27)
- 参考文献数
- 23
本研究は,うつ病をもつ夫と生きる妻の体験を記述し,うつ病患者の妻に対するケアへの示唆をうることを目的とした。うつ病と診断された夫の妻2名に対し,非構成的インタビューを行い,得られた語りをPatricia Bennerの解釈学的アプローチを用いて分析した。分析の結果,妻は夫がうつ病をもつことで,夫婦間のコミュニケーションの変容を体験していた。妻はうつ状態の夫といるとき,夫の症状と同様の身体的感覚を受けていた。これはMaurice Merleau-Pontyが提唱した間身体的次元でのコミュニケーションの影響であると考えられた。この間身体的な体験が,夫を理解することに重要な意味をもっていた。そして,妻は夫のうつ病症状,および医療者や親戚等が期待する妻の行動を意識するがゆえに,自己に非常に自覚的になっていた。妻は経験を重ねながら,知的理解と間身体的理解を通して妻なりに夫を理解し,自らのあり方を見出していた。