著者
山本 敦子 橋本 健志 森本 優香 加藤 正樹 木下 利彦 四本 かやの
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.213-221, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究の目的は,地域で生活する統合失調症患者の社交不安症状に対する作業療法の効果を検討することである.ケースシリーズ研究で,3症例に対する6ヵ月間の作業療法介入前後の社交不安障害尺度得点,陽性・陰性症状評価尺度得点,日常生活場面での対人交流の状態を比較した.結果,6ヵ月間の作業療法介入によって,統合失調症患者の社交不安症状に改善がみられ,対象者全員に精神症状の改善も認められた.社交不安症状が中等度の患者は,重度の患者と比較し,より大きな改善がみられた.作業療法介入が,統合失調症患者の社交不安症状の改善に寄与できる可能性が示唆された.
著者
真下 いずみ 田中 和宏 橋本 健志
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.372-379, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

4年間自閉的生活を送っていた重症統合失調症患者に,生活行為向上マネジメント(MTDLP)を用い,患者の希望する生活行為である「働くこと」を支援した.作業療法士が,就労継続支援B型事業所内(以下,事業所)に出向いて認知機能,精神症状,身体機能を評価した.多職種連携プランを立案し,事業所職員と協働した結果,患者は通所に至った.また介入前後で機能の全体的評定,社会機能評価尺度,WHO/QOL 26の得点が向上した.以上から,重症度によらず患者が希望する生活行為を遂行することが,社会機能と主観的QOLの向上をもたらすと考えられた.作業療法士が地域に出向いて患者が希望する生活行為に介入することの有用性が示された.
著者
真下 いずみ 四本 かやの 角谷 慶子 橋本 健志
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.87-95, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

併存障害を有する成人期ADHD患者に訪問作業療法を実施した.症例は40歳代の女性で,家事や育児を遂行できず入退院を繰り返していた.訪問作業療法では,注意の持続困難を考慮した片づけの工程の簡素化,視覚優位の特性を活かした視覚的手掛かりの設置などを行い,症例の遂行能力に適合するように環境を調整した.同時に,同居家族に心理教育を行い,多職種連携を行った.結果,症例は家事と育児を遂行できるようになり,介入後2年間入院しなかった.以上から,成人期ADHD患者の訪問作業療法の意義は,作業療法士が障害特性に関する医学的知識と作業の専門的知識を活用して,患者の生活を再建することであると考えられた.
著者
廣田 美里 松葉 祥一 橋本 健志
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.2_13-2_23, 2016-06-20 (Released:2017-01-27)
参考文献数
23

本研究は,うつ病をもつ夫と生きる妻の体験を記述し,うつ病患者の妻に対するケアへの示唆をうることを目的とした。うつ病と診断された夫の妻2名に対し,非構成的インタビューを行い,得られた語りをPatricia Bennerの解釈学的アプローチを用いて分析した。分析の結果,妻は夫がうつ病をもつことで,夫婦間のコミュニケーションの変容を体験していた。妻はうつ状態の夫といるとき,夫の症状と同様の身体的感覚を受けていた。これはMaurice Merleau-Pontyが提唱した間身体的次元でのコミュニケーションの影響であると考えられた。この間身体的な体験が,夫を理解することに重要な意味をもっていた。そして,妻は夫のうつ病症状,および医療者や親戚等が期待する妻の行動を意識するがゆえに,自己に非常に自覚的になっていた。妻は経験を重ねながら,知的理解と間身体的理解を通して妻なりに夫を理解し,自らのあり方を見出していた。
著者
橋本 健志 四本 かやの 児玉 豊彦 田中 千都 平良 勝 大畠 久典 北岡 祐子 藤本 浩一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、自殺未遂歴および希死念慮がある精神障害者に対してリスクをマネージメントしながら、就労支援を行う特化型就労支援プログラムを開発しその有用性を検討することを目的に実施した。このプログラムは、医療機関と連携した特化型就労支援窓口と携帯メール自動配信サービスから成り立っている。K市内の就労支援事業所と精神科診療所外来作業療法部門の2箇所で医療機関と連携した特化型就労支援窓口を開設しその有用性を検討した。さらには、希死念慮等の精神症状を有する精神障害者に対して携帯メールを配信するプログラムを開発し、それによって希死念慮が低下し、社会資源を積極的に利用する者が有意に増加したことを報告した。
著者
橋本 健志
出版者
立命館大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、運動効果の分子機序としての乳酸が、認知機能などの脳機能にどのような影響をもたらすかを探究し、認知症改善への応用を目指すものである。そして、認知症の予防または改善に効果的な運動・栄養処方の確立のための学術的基礎の構築を目的とした。神経細胞に対する乳酸添加や、実験動物に対する運動と乳酸サプリメント併用の結果から、乳酸が脳機能の亢進に寄与する可能性を示唆する結果を得た。また、ヒトを対象とした実験から、乳酸代謝と神経活動の亢進が認知機能亢進に重要である可能性が示唆された。
著者
真下 いずみ 田中 和宏 橋本 健志
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.372-379, 2020-06-15

要旨:4年間自閉的生活を送っていた重症統合失調症患者に,生活行為向上マネジメント(MTDLP)を用い,患者の希望する生活行為である「働くこと」を支援した.作業療法士が,就労継続支援B型事業所内(以下,事業所)に出向いて認知機能,精神症状,身体機能を評価した.多職種連携プランを立案し,事業所職員と協働した結果,患者は通所に至った.また介入前後で機能の全体的評定,社会機能評価尺度,WHO/QOL 26の得点が向上した.以上から,重症度によらず患者が希望する生活行為を遂行することが,社会機能と主観的QOLの向上をもたらすと考えられた.作業療法士が地域に出向いて患者が希望する生活行為に介入することの有用性が示された.
著者
櫻井 友実 橋本 健志 四本 かやの
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.273-281, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
38

本稿の目的は,我が国における精神障害(者)に対する偏見について,偏見が弱い人の属性や偏見を低減する効果的な介入を検討するために現段階で信頼性の高い一定の知見を得ることである.医中誌WebとCitation Information by NII(CiNii),J-Dream Ⅲで文献検索し,検索範囲は2002年1月1日から2017年10月13日とした.検索の結果,1,906編中13編が分析対象となり,その結果,偏見が弱い人の属性は,精神障害者との接触があることと知識があることの2点である可能性が示唆された.精神障害者に対する偏見を低減するための効果的な介入は,精神障害者と『共に作業』することと,普及啓発活動だと考えられる.
著者
塚本 敏人 橋本 健志 平澤 愛 長谷川 博 小河 繁彦
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.225-232, 2014-11-25 (Released:2017-07-28)

Relevance of decreased cerebral blood flow (CBF) and impaired cognitive function has been pointed out, however, the direct relationship between changes in CBF and cognitive function has not been sufficiently elucidated. The purpose of this study was to determine whether cognitive function would be affected by the acute reductions in CBF in 14 male healthy students. Middle cerebral artery mean blood velocity (MCA V_<mean>) and cognitive function were measured at three conditions; rest (pre), reduced CBF condition (during), and CBF recovery condition (post). The reduction in MCA V_<mean> was elicited by voluntary hyperventilation induced-hypocapnia. Cognitive function was impaired with the reduction in MCA V_<mean>; i.e. reaction time at during hyperventilation condition was significantly longer than those of pre and post conditions (in conflict task; P<0.01). These results suggest that cognitive function may be affected by acute change in MCA V_<mean> by hyperventilation.
著者
田中 千都 四本 かやの 田中 究 橋本 健志
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.189-197, 2015-04-15

要旨:強迫性障害の中でも重度の強迫性緩慢は,薬物療法や行動療法が十分な治療効果を示さず,社会的孤立や著しい生活機能の低下につながると言われている.症例は強迫性緩慢が著しくADLに長時間を要し言語的コミュニケーションが困難な若年女性であった.機能的自立度の改善を目的とし,生活に困難をもたらしているADLと対人面の具体的な活動に焦点化し能動性の改善を図る作業療法を行った結果,強迫性緩慢は軽減しADLと対人面は改善した.また,その後5年のフォローアップ期間も症状再燃することなく機能は保たれ地域生活を送っている.以上から,重度強迫性緩慢の患者には遂行困難な活動に対して能動性の改善を図る作業療法が有用であると示唆された.
著者
西村 宗倫 川﨑 将生 斉藤 泰久 橋本 健志
出版者
公益社団法人 日本地下水学会
雑誌
地下水学会誌 (ISSN:09134182)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.125-158, 2017-05-31 (Released:2017-06-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

水循環基本法の制定等を踏まえて,水循環解析の社会的実装の促進が求められる。そこで,国土交通省国土技術政策総合研究所では2016年3月に地方公共団体等向けの手引き書として,水循環解析の手順や必要な資料等を「水循環解析の技術資料」にとりまとめた。これを補足するものとして,本報告は,福井県大野盆地において実施した水循環解析について,モデルの設定手法や再現性の検証手法について詳述したものである。特に,水循環解析の再現性について地下水位に着目した検討を行った結果から,構築したモデルの高い再現性を示した。本報告は,持続可能な地下水の利用と保全に水循環解析を活用することの一助になると考えられる。