著者
永嶌 智子 比嘉 眞理子 上田 絢美 山下 馨 一城 貴政 弘世 貴久
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.827-832, 2018-12-30 (Released:2018-12-30)
参考文献数
21

41歳,女性.X年5月に腰痛,発熱が出現し解熱鎮痛剤を内服したが改善せず当院受診.来院時,CRP 22.99 mg/dL,WBC 17630/μL,血糖249 mg/dL,HbA1c 10.6 %,尿検査で細菌尿を検出,妊娠反応陽性だった.腹部超音波検査にて右腎盂に結石と腎盂腎杯の拡張を認め腎後性腎盂腎炎,2型糖尿病と診断し抗菌薬点滴と補液,持続静脈インスリン注入を開始し尿路閉塞に対し経尿道的尿管ステントを留置した.入院時の血液培養と腎盂尿培養からLactobacillus属が検出された.第5病日に炎症反応の改善を認め,第22病日に退院した.非病原菌であるLactobacillusは膣内の常在菌であり感染症の起因菌となることは稀である.本症例では高血糖による免疫能低下や妊娠による細菌叢の変化がLactobacillus属による腎盂腎炎を惹起した可能性が示唆された.
著者
横田 純子 佐藤 淳子 荒川 敦 栗﨑 愛子 大村 千恵 金澤 昭雄 弘世 貴久 藤谷 与士夫 綿田 裕孝
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.699-705, 2014-09-30 (Released:2014-10-07)
参考文献数
20
被引用文献数
1

症例は58歳の女性.右眼瞼下垂を主訴に近所の脳神経内科専門医を受診し2型糖尿病と糖尿病による動眼神経麻痺と診断され内服加療が開始された.その後,右眼の視力低下がありMRIで眼窩内の腫瘍を認めたが生検を拒否したため経過観察となった.3か月後,視力低下により食事摂取量が低下,全身状態不良で当院に緊急入院した.入院時のMRIで眼窩内の腫瘍の頭蓋内浸潤を認めたため入院直後は脳浮腫や,肉芽腫などの炎症性疾患を考慮しステロイドが使用された.しかし,生検で侵襲型アスペルギルス症が疑われステロイドは中止となりボリコナゾールが開始された.ボリコナゾール開始半年後より病巣の縮小を認め,視力は改善しないものの頭痛などの症状は改善した.糖尿病患者で視力低下や眼球運動障害,眼臉下垂を認めた場合,真菌による眼窩先端症候群の存在を念頭におくべきことを示唆する症例であった.