著者
木村 武実 吉田 浩之 和田 吉晴 上田 啓司 弟子丸 元紀
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.459-462, 1994-06-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
12

Trimebutine maleateの投与により構音障害をきたした老年期うつ状態の1症例を経験した. 症例は67歳, 女性. 65歳時, 誘因なくうつ状態となり, 抗うつ薬により中枢神経系の副作用をきたし難治であった. 66歳時, 過敏性腸症候群に対するtrimebutine maleateの投与1時間後から強度の眠気とふらつきを前駆症状として構音障害, 手指振戦を呈し, trimebutine maleate中止により数日で消失した. 頭部CTでは透明中隔腔・ヴェルガ腔や大脳基底核の石灰化, 大脳皮質の軽度萎縮などが観察された. tributineme maleate投与と構音障害出現との時間的関連, 脳血管障害や他の薬物関与の否定などから, 構音障害はtrimebutine maleateの副作用として発現したと考えられた. その機序としては, trimebutine maleateによる中枢神経系のドーパミン系とコリン系の不均衡が推測され, 背景には中枢神経系における先天的および後天的脆弱性が存在するものと推察された.
著者
弟子丸 元紀 宮川 太平 鈴木 高秋
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.787-790, 1977-07-01

I.はじめに 頭部外傷後遺症による性格変化に関しては,すでに多数の報告がなされている。しかし,長期経過例の病理組織学的検討を行つた報告は少ない3,5,13,21)。特に性格変化との関係についての検討は非常に少ない5)。 本例は受傷後,7年4カ月を経過し,性格変化として躁うつ的状態を示し,死後剖検により病理所見は,前頭葉眼窩面に限局した皮質挫傷巣のみであつた。そこで本稿では,性格変化と病理所見との関連性について考察を行つた。