著者
津曲 和哉 西田 紘士 張 智翔 石濱 泰
出版者
日本プロテオーム学会
雑誌
日本プロテオーム学会誌 (ISSN:24322776)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.47-52, 2022 (Released:2023-01-14)
参考文献数
20

多くの膜タンパク質は,エクトドメインシェディング(シェディング)と呼ばれる切断を受ける.例えば,膜型リガンドのシェディングは,リガンドが離れた細胞の受容体に結合することを可能にする.シェディングは,シグナル伝達などによって厳密に制御されているため,特定の条件下においてシェディングを受ける基質を知るためには,プロテオミクスによる網羅的な解析が有効である.膜タンパク質は比較的発現量が少ないものが多いため,効率的なシェディング基質解析のためには,事前に基質の濃縮を行った後,LC/MS/MSで測定することが重要である.本稿では,シェディングの網羅的解析に必要不可欠な3つのプロテオミクス関連技術:1)多くの膜タンパク質には糖鎖修飾が施されていることに着目し,それを対象とした分泌タンパク質解析法,2)細胞表面タンパク質のN末端を特異的に標識し濃縮することができるタンパク質末端解析法,および3)最近我々のグループが開発した,シェディング基質切断部位の同定にも応用可能な高感度タンパク質両末端解析法について紹介する.