著者
張 永杰 吉村 尚久
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩鉱 (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.363-378, 1997 (Released:2006-09-22)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

南部丹沢山地に分布する安山岩質—玄武岩質火山岩類からなる中新世丹沢層群は,束沸石,濁沸石,ブドウ石—パンペリー石,緑れん石,緑れん石—角閃石及び角閃石帯に分けられる。これらの帯に産出するブドウ石,パンペリー石及び緑れん石のFe3+/(Fe3++Al)値は変成温度の上昇に伴い低くなり,一つのサンプルあるいは変成帯でも産状と共存鉱物によって,異なっている。グランダイトザクロ石が同定され,また,その形成条件が検討された。ブドウ石,パンペリー石及び緑れん石が高いFe3+値を示すことと赤鉄鉱+スフェンが広く出現することによって,変成時の高いfo2が推定される。高いFe3+値のブドウ石,パンペリー石及び緑れん石の安定条件はfo2に強く支配されることから,ブドウ石—パンペリー石帯から角閃石が出現しない緑れん石帯への転換が解釈できる。