著者
張 静風 田村 照子
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.756-765, 2014-10-20 (Released:2017-11-28)
参考文献数
44

暑熱環境下の温度と湿度が人体に及ぼす暑熱ストレスを明らかにするため,気温28℃,31℃,34℃,湿度30%,60%,90%を組み合わせた計9条件の人工気候室内に,ブラジャーとショーツのみ着用の成人女子6名を60分間滞在させ,人体の体温調節反応に関する生理・心理反応,心拍変動による自律神経反応及び唾液アミラーゼ活性を測定した.主たる結果は以下の通りである.①体温調節反応の平均皮膚温,背部発汗量,皮膚水分量はいずれも温湿度上昇とともに有意に上昇した.直腸温については温湿度条件による有意な変化が認められなかった.②温冷感,湿潤感,快適感は環境温湿度の上昇とともに有意に不快側に変化した.③心拍数については温湿度の上昇に伴い有意に増加した.④滞在30分時の交感神経活動は温湿度上昇とともに有意に上昇し,副交感神経活動は減少する傾向を示した.⑤滞在30分時の唾液アミラーゼ活性は,湿度の上昇に伴い有意に上昇した.⑥皮膚水分量は不快感,湿潤感,唾液アミラーゼ活性,交感神経活動とそれぞれ0.888,0.982,0.958,0.910の高い相関を示し,暑熱湿潤ストレスの有効な指標であることが示された.また,ストレスマーカーである唾液アミラーゼ活性,交感神経活動も暑熱ストレスの指標として有効であることが示唆された.