著者
当流谷 啓一 松島 亘志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_527-I_534, 2017 (Released:2018-01-31)
参考文献数
26

隕石衝突によるクレーター形成プロセスは,惑星表層の地形・地質進化に重要な役割を果たすため,その力学的メカニズムの詳細な解明が求められている.本研究では,NASAの月周回無人衛星(LRO)に搭載されたカメラ(LROC)の高解像度データを利用し,海と高地の比較的若い月面クレーター136個を対象として,その分析を行った.また,2次元SPH法を用いた数値解析を行い,様々なサイズのクレーターの形状特性や生成過程を調べて,観測との比較を行った.その結果,クレーターの直径に対する深さの比は,直径が10kmを超えると急激に減少すること,クレーター直径が20km以上では中央丘が現れること,などの特徴に対して,画像解析とSPH解析の結果が一致した.またクレーター中央丘は,隕石衝突直後に形成される掘削抗の斜面が内側に円弧滑りを生じることによって,より深い場所の岩石物質が表層に持ち上がる事によって形成されること,その円弧滑りメカニズムがクレーター直径深さ比の変化に影響を及ぼしている可能性があることが解析により示唆された.