著者
後藤 悠里
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

障害者差別禁止法が施行された今、障害学生に対して学ぶ機会を保障することは大学にとって喫緊の課題であり、そのためには、情報アクセシビリティにおけるバリアフリー化が欠かせない。その中でも、授業の情報を伝えるシラバスをアクセシブルなものにすることが重要である。本研究の目的は、障害学生の学ぶ権利を保障することができるシラバスの作成指針を提案することである。そのために、障害学生に、現行のシラバスの問題点や改善点を示してもらい、シラバス作成指針を提案する。本研究においては、以下の手続きを取った。調査は、障害学生4人を含む10人の学生を対象とし、大学で実際に使われている、ランダムに抽出された75のシラバスを評定してもらった。対象者は、それぞれのシラバスに4段階で評価をし、評価が高いシラバス、評価が低いシラバスをそれぞれ5つずつ選ぶ。その後、調査者が対象者に対し、半構造化面接を行った。得られた結果は「シラバスの見やすさ」と「シラバスに必要な情報」の2つにまとめられる。第1の、「シラバスの見やすさ」については、視覚障害学生から意見があった。第2の、「シラバスに必要な情報」は半数以上の学生から意見があった。具体的には、文言の曖昧さや、情報の不十分さについて指摘がされた。以上の結果から、以下の2点が提言できる。第1に、「シラバスの見やすさ」について、インデントを使用する、英字のフォントサイズはやや大きめにするなどの指示が必要である。第2に、「シラバスに必要な情報」について、評価については割合を提示することや学外活動やグループワークについてはより具体的に情報を提示することである。本研究では、障害のあるなしにかかわらず、対象者からシラバス改善の要求が挙げられた。シラバスの改善は障害のあるなしにかかわらず、学生の学ぶ機会の確保に繋がるユニバーサルな取り組みであるといえるのではないだろうか。