著者
永田 量子 後藤 節子 鈴木 和代
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

日本における寝たきり老人は増え続け、平成11年には約120万にも達するといわれている。本研究は、寝たきり老人を起こすことの一つの妨げとなっている起座時(起立性)低血圧を防ぐために考案した「二度起こし法」の有効性を科学的に立証し、その適応を明らかにするを目的としている。起立性低血圧は多様な人に生じやすく、転倒や廃用性症候群、QOLの低下につながるので可及的な予防が必須である。二度起こし法とは、まず老人に声をかけて上半心をゆっくり起こし再度寝かせ、さらにもう一度ゆっくり起こしてベットに腰掛けさせて足底を床につける簡単な方法である。二度起こし法を寝たきり老人、健常老人、健常老人を対照に、一般的に行われている一度起こし法との差を以下のように測定・観察し次の様な結果を得た。1.一度起こし法と二度起こし法による臥床時と起座時の血圧の変動測定寝たきり老人では、一度起こし法の血圧低下が、二度起こし法により有意に軽減し、随伴症状も軽減した。特に糖尿病・高血圧を合併した人、人工透析をしている人では二度起こしよりさらに三度起こしの法がさらに有効であった。健常老人、健常成人では一度起こし法と二度起こし法の間には有意な差はなかった。2.一度起こし法と二度起こし法による臥床時と起座時の自律神経学的検査の変動測定健常老人に心電図RR間隔変動係数を用いて自律神経学的検査を行ったところ、安静時から起座時の心電図RR間隔変動係数の平均変化量は二度起こし法が有意に低値であり、より安定した自律神経状態をつくった。