著者
徐 美善
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.49-63, 2001

本研究は,知覚実験にもとづき「同化現象は知覚上許容される調音上の簡略化である」という仮説の妥当性を検討するものである。また,Steriade(2001)が提案した「P-map仮説」,つまり人間の知覚能力が母語や母語の音韻構造にかかわりなく同一であるという仮説も検討する。鼻音と側音の連続に関して異なる音韻パターンを示す3つの言語-朝鮮語,モロッコアラビア語,スウェーデン語-の話者を被験者として知覚実験を行なった結果,部分的ながら「P-map仮説」の妥当性が証明された。また同じ知覚実験から/ml/,/ŋl/という鼻音-側音の連続に見られる/l/の鼻音化が普遍的知覚原理に支配されており,n/lの連続に見られる/n/の側音化と/l/の鼻音化がともに知覚的に許容される変化であるという結果も得られた。