著者
徐 長厚
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

プラスチックの可塑剤とし使用されるSVOCは、特に発熱する家電製品や建物の建材などから室内にごく微量、継続的に放散され、室内の空気清浄度を悪化させる。この空気中へのSVOC放散は疫学的調査などから子供の喘息やアレルギー症状など人体への健康影響も懸念され、その対策が必要とされている。本研究では、気流性状を工夫したチャンバー内に家電製品など放散量測定試料を設置し、放散量全量を測定するのではなく特定点における濃度測定により、家電製品からのSVOC放散量全量を計測する試験法を開発した。現在、市場で販売されている家電製品の液晶テレビ、パソコン、プリンター及びラジカセより放散するSVOC放散量測定を行った。家電製品において、電源を入れた場合、発散する熱に依存し、化学物質の放散量が増加する傾向が見られたが、電源の設定(ON/OFF)に関わらず、いずれの家電製品よりフタル酸-2-エチルヘキシル、2エチル-1ヘキサノール、フタル酸ジブチルなど内分泌系に対する有害性や人体の健康に悪影響を与えると報告されている化学物質が検出され、SVOC放散量の定量・定性的な評価が可能であった。今回開発した測定法は、日本の消費者のみならず、世界の家電製品ユーザーに製品の正確な準揮発性化学物質放散量評価を知らしめることを可能にするものである。また、本研究成果による家電製品から放散するSVOC放散量の正確な評価により、SVOCに関する低放散量の材料の研究開発及び普及が期待できる。