著者
得能 想平 Tokuno Sohei
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科『共⽣学ジャーナル』編集委員会
雑誌
共生学ジャーナル (ISSN:24326755)
巻号頁・発行日
no.3, pp.76-95, 2019-03

論文実存主義、構造主義、ポスト構造主義によって知られるフランス現代思想は、当時の伝統的なカント主義の批判から出発した「アヴァンギャルド」として見なされることが多かった。しかし、テクストを注意深く読むならば、そこにはまさにそのようなカント主義との関連を示唆するものも少なくない。本稿は、このような背景のもとで、これまでほとんど忘れられていたマルシャル・ゲルーの『ザロモン・マイモンの超越論的哲学』における時間と空間の概念を取り上げなおすものである。この書物に見いだされる、無限悟性を前提とした時間と空間の考え方は、カント主義と現代思想のあいだにこれまで見過ごされていた連続性を見いだす機会を与えるものである。