著者
御堂岡 潔
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

地球社会的諸問題に対して、日本・日本人がグローバルな貢献をすることが期待されている状況から、日本人にとって、偏狭な自国意識から脱却し、グローバリスムにのっとった世界意識を養い、さらに、その世界意識と両立する適切な自国意識を培うことが、必要と考えられる。本研究の目的は、日本人の世界意識と自国意識のダイナミクスを、その相互関連をとらえつつ、かつ歴史的経緯を踏まえながら、意識調査により体系的に把握し、日本人にとって好ましい世界意識、自国意識のあり方とそこへといたる過程を、理論的・実証的に探究することにある。上記目的を達成するために、理論的検討を随時進めた。実証的研究としては、平成7年度は学生とその父母を対象に予備調査をおこない、(1)調査の枠組みの洗練、(2)世代差の検討、(3)世代間伝達の可能性の検討をおこなった。この予備調査の結果と理論的検討を踏まえ、平成8年度は、無作為抽出法により選ばれた一般個人合計1,550名を対象に、本調査(全国調査と首都圏調査)を実施した。その結果から、(1)日本人の世界意識と自国意識のダイナミクスの実態把握が明らかになり、偏狭な意識の存在が確認された。また、(2)首都圏調査から、首都圏の人々の世界意識と自国意識の時系列的変化が検討され、「国際化」「地球社会」などが唱道されてきたにも関わらず、この10年間で、偏狭な意識が薄れているということはなく、むしろ部分的には強まっていることが明らかとなった。