著者
徳増 智 加藤 正弘 矢野 文香
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.269-276, 1974
被引用文献数
3 2

(1)Pelargonium属植物の栽培種は観賞用および香料用に用いられているが,一般に不稔性が高く,種間交雑は困難である。本論文ではPelargoniumの数種を用いて相互に交雑を行ない,鐙光顕微鏡を用いて雌蕊における花粉管の行動を観察し,また結莢,結実の状態を調査しその結果から種間の交雑親和関係を推定した。(2)用いた材料はゼラニウム P.hortorumの2倍体(2n=18)と4倍体(2n=36)各1品種,ペラルゴニウム P.domesticum(2n=44)2品種,アイビーゼラニウム P.peltatum(2n=18)1品種,匂いゼラニウムのうち P.crispum(2n=22)3品種,P.quercifolium(2n=44)1品種,ブルボン P.roseumの2倍体(2n=77),3倍体(2n=115)および4倍体(2n=154)である。(3)交配の結果との組合せにおいても花粉は柱頭上でよく発芽した。発芽した花粉管は多くの組合せで柱頭または花柱組織内に侵入し,あるものはそこで伸長を停止した。また自家受粉,同一種内の品種問交配,および匂いゼラニウム内の種間交配では花粉管は子房に侵入した。花粉管が子房に到達したもののなかで多くのものが結莢したが,種子の得られたのは P.crispum の3品種間交配のほかは自家受粉によるもののみであった。