著者
蓬原 雄三 鳥山 国士 角田 公正
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.85-90, 1967-06-25 (Released:2008-05-16)
参考文献数
9
被引用文献数
19 20

A new rice variety "Reimei" was obtained by gamma-ray irradiation of seed of "Fujiminori", a leading variety with long culm in north-eastern district of Japan. This new mutant variety has a characteristic of short culm, reduced by approximately 15cm as compared with the original variety.
著者
長谷川博 井上雅好
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.301-308, 1980
被引用文献数
6

アジ化ナトリウム(NaN<SUB>3</SUB>)はオオムギにおいて強力な突然変異誘起効果が確かめられているが,一方その然変異誘起効果が認められない植物も知られている。本報告は水稲品種「日本晴」の休眠種子および浸漬種子(0~54時間)に,PH3のリン酸緩衝液中において,アジ化ナトリウムを処理(0~10-1M,1.5~24時間)し,その処理障害および突然変異誘起効果を明らかにしたものである。休眠種子処理における幼苗期の処理障害の指標として,処理後10日目における発芽率,幼苗草丈を調べ,さらに発芽遅延日数についても調査した。処理障害は濃度および処理時間の増加とともに増大した。ことに,幼苗草丈および発芽遅延日数については著者らが前報(HASEGAWA and INOUE 1980)において示したアジ化ナトリウムの``dose"(濃度×処理時間)反応曲線が得られた。M<SUB>1</SUB>種子稔性は各処理区において著しい低下は認められなかった。この結果はアジ化ナトリウムは染色体異常を生じたいという報告を支持するものである。最高葉緑突然変異率はM<SUB>1</SUB>穂あたり11.1%,M<SUB>2</SUB>個体あたり1.22%であり,イネにおけるアジ化ナトリウムの突然変異誘起効果はオオムギにおける効果よりも低いことが明らかになった。M<SUB>2</SUB>代における農業形質の変異もあわせて調査した結果,晩生,短稈,優性,不稔等の変異が多く見い出された。
著者
梶浦 一郎 鈴木 茂
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.p309-328, 1980-12
被引用文献数
3 3

ニホンナシ在来品種と育成品種ならびにチュウゴクナシの白梨系統,秋子梨系統,合わせて432品種の果形図を52の文献から集め,果形を表現する9形質を測定して,ニホンナシ在来品種の果形の変異の範囲,分布の様相,果形から見た在来品種の地理的分布の偏りを明らかにするとともに,品種改良に伴う果形の変遷を調べた。9形質の頻度分布図より,秋子梨系統には肩と帯端部の丸みおよび肩幅が大きく,しかも両窪が浅い品種が多かった。白梨系統は各形質とも変動が大きかったが,肩幅が狭く,肩の丸みが小さい品種が多かった。ニホンナシは各形質とも変動が大きくて,扁円形から倒卵形,卵形まで種々の果形が見られたが,円形でやや重心が低く,両窪もやや深い品種が多かった。一般に特定形質で特異な値を示した品種は地理的に局在する傾向が見られ,特に果形の細長い品種は九州および日本海岸地方に多く分布した。江戸末期から明治時代に発見された品種群中には,江戸時代の品種に比べ,円形,扁円形の品種および両窪の深い品種が多く,重心の低い品種や帯端幅の狭い品種は少なかった。これに反し,近年の育成品種には,円形または扁円形で重心が果実の中心にあり,しかも,帯端幅の広い品種が多く,一部には著しく扁円で両窪の深い品種も含まれた。9形質の主成分分析による第1一第2主成分の品種散布図から,9つの果形群に分け,品種由来地の地方別,種類別ごとに,各果形群の出現率を比較した。九州在来品種群は他の地方よりも果形が長く,重心が下がった果形群の比率が高く,その出現率は白梨系統と似ていた。また,関東在来品種群は扁円で肩幅が広く,梗塞の深い果形群の比率が高かった。第2一策3主成分の散布図から,9つの果形群に分けると,東北地方は他の地方に比べ,帯窪が浅くて重心が低く,帯端幅の狭い果形群の比率が大きく,その出現率は秋子梨と似ていた。一方,北陸地方には帯窪の浅い品種の分布が見られなかった。
著者
野口 弥吉
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.137-141, 1958
被引用文献数
2

A few investigators have hitherto reported that they succeeded to increase mutability of plants by keeping them under an abnormal condition of nutrition excluding a special chemical element, such as nitrogen, phosphorus or sulphur. Recently, the chemical analysis proved phosphoric acid was one of the essential components of nucleic acid, which was believed to be an heritable substance. Therefore, the effect of phosphorus shortage on the composition of nucl.eic acid, and consequently induction of mutation was examined in the present experiment. Progeny test of the lines of rice plants; originated from the seeds of plants which were cultured in nutrient solution wanting in phosphorus for whole the life except a few weeks at the seedling stage have progressed in these several years and a good number of variations, such as chlorophyl defect, poor growing habit, gigas-type, sterility etc., was found, but most of them were mere modifications and disappeared in the later generations.
著者
吉田 雅夫 京谷 英寿 安野 正純
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.p17-23, 1975-02
被引用文献数
1

1969年より農林省果樹試験場(平塚市)において,Prunus属果樹の類縁関係を調べるとともに品種および台木の育種に役立つ基礎資料を得るため,スモモ亜属を中心に種間交雑を行い交配親和性を調査した。 1) ウメとアンズは植物学的にきわめて近縁であり,一般にいずれを母樹に選んでも相互によく交雑した。しかし,ヨーロッパ系アンズとウメは交配親和性が低かった。 2)スモモにウメあるいはアンズの花粉を交配した場合,かなり高い結実割合が得られた。スモモはウメおよびアンズとかなり近縁であると考えられる。 3) スモモにモモの花粉を交配した場合,スモモ亜属の花粉よりは劣ったが,ある程度結実することが認められた。スモモに中国オウトウとソメイヨシノを交配した場合はほとんど結実せず,交配親和性は認められなかった。 4)得られた結果は雑種個体の育成に役立つばかりでなく,核果類品種の結実安定をはかるための受粉の問題にも示唆を与える。
著者
岡崎 桂一 浅野 義人 大澤 勝次
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.59-64, 1994-03-01
被引用文献数
1

オニユリ,エゾスカシユリ等の交雑から育成されたアジアティックハイブリッド(以下AH)は豊富な花色や栽培が容易な特性を持つ.一方,ヤマユリ,カノコユリ等の交雑から育成されたオリエンタルハイブリッド(以下OH)は大輪で香りのある花を持つ.これら2つの品種群はユリ類の中ではともに重要な品種群であり,相互に優良形質を導入することが望まれているが,この品種群間の交雑は極めて困難とされてきた.また,ユリの遠縁交雑では,胚が形成されてもその大きさは極めて小さく,胚培養での培養成功率は低い場合が多い.そこで,摘出胚(0.1〜2.0mm)に対する糖・植物ホルモン,アミノ酸の効果を検討し胚培養成功率の向上を図るとともに,その改良した培地を用いて上記品種群間の雑種育成を図った.OHの品種間交雑胚は,3%薦糖を含む培地では全く生長しなかったが,6,12%の薦糖を含む培地および4%照糖,4%マンニトール,4%ソルビトールを同時に含む培地で高率に生長した.AHの交雑胚は,3%薦糖を含む培地でも交雑胚の生長がある程度見られたが,高濃度の糖を含む培地で生長が著しく促進された.高精濃度区の胚の生存率は,培養7週間後の48.1〜94.1%から培養5ヵ月後には9.1〜70.0%に低下した.特にAHの12%薦糖区の生存率は,84.8%から9.1%に著しく低下した.OHの種間交雑胚1`カサブランカ'×(ヤマユリ×タモトユリ)1を3,6,9%蔗糖を含む培地で培養したところ,9%蔗糖区では胚の異常生長や生育停止が見られ,生存率は比較的低く,5ヵ月後の生存率はそれぞれ2.8,36.7,16.7%であった.品種間および種間交雑の結果を考え合わせると,本試験で扱った交雑胚に対する最適薦糖濃度は6%であると思われた.薦糖とマンニトールを加えた培地においても,高率に胚の生長がみられた.9%薦糖区と,ほぼ同モル数の糖(照糖+マンニトール)を含む区を比較すると,後者において胚の奇形発生率が低く生存率が高い傾向にあった.3%薦糖区および高精濃度区に各種植物ホルモン,プロリン,カゼイン加水分解物を添加したところ,両区とも胚の生存率は向上しなかった.ピクロラム0.01〜1mg/l,BA0.02,O.2mg/l,およびこれらを組み合わせて添加したところ,胚の肥厚や湾曲などの奇形が見られた.花柱切断受粉を用いたOH(♀)とAH(♂)の交雑では,花粉管が子房に侵入したが,逆交雑では花粉管の伸長は著しく阻害され子房への侵入は見られなかった.交配した57花中,44花が結実し,全部で0.1〜0.8mmの大きさの106個の胚が得られた.得られた胚を培養したところ,3%薦糖区では胚の生長は見られなかったが,4%薦糖,4%マンニトール,4%ソルビトールを添加した区では,胚の生長が見られ植物体が得られた.この植物は,葉の形態特徴や酸性フォスファターゼアイソザイムの分析によって雑種であると判定された.OHとAHの雑種が育成できたとする報告は一例あるものの,育成個体の雑種性が確認されていない.本実験では,改良した胚培養培地を用いることによってOHとAH間の雑種を育成した.また育成個体の雑種性も明らかにした.
著者
本田 秀夫 平井 篤志
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.339-348, 1990-09-01
被引用文献数
14

細胞融合は,交配不可能な異種植物間における遺伝子の導入を可能とし,育種上重要な手段を提供している.この際,体細胞雑種の同定,選抜は不可欠のステップであり,アイソザイムパターンの解析をはじめ,様々な方法が用いられている.しかし,それらの多くは,比較的多量のサンプルを必要とすること,特定の種の組み合わせに限られること,あるいは,取扱い上の困難さなどから必ずしも有効ではなかった.そこで,種特異的な塩基配列を持つrRNA遺伝子(rDNA)に渚目し,UCHIMIYAらの方法を基により簡便で能率的な方法を開発を試みた. Brassica, LycopersiconおよびNicotinaに属する植物を材料として用いた.まず,DELLAP0RTAの方法を改良してより微量の葉(100mg)から全DNAを抽出した.この抽出法は,細胞磨砕液からタンパク質や多糖類を酢酸カリウムにより除去し,さらにイソプロパノールによりDNAを特異的に沈澱させるものである.操作は簡単で,塩化セシウムによる超遠心のような複雑な操作は不要であつ,短時間で済み,収量も良く,得られたDNAは制限酵素で切断することが出来た.次に,抽出したDNAの1/50量(葉2mgからのDNAに相当)を適当な制限酵素で3時間処理し,0.7%アガロースゲルで電気泳動を行った.キャベツ,コマツナおよびその体細胞雑種の泳動パターンに示したように(Fig.1a),完全に切断された場合,EtBrで染色したDNAはほぼ均一なsmear bandsとなって現われた.DNAをナイロンメンブレントにトランスファーした後,クローン化されたイネのrDNAを非放射性のdigoxigeninでラベルしたものをプローブとして,バイブリダイゼーションを行った(Fig. 1b).その結果雑種植物は融合親特有のバンドを併せて有することにより,体細胞雑種としての同定が可能だった.トマト栽培種と野生種の組み合わせにおいても同様に同定できた(Fig. 2).
著者
塩谷 格 川瀬 恒男
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.57-66, 1989-03-01 (Released:2008-04-18)
参考文献数
21
被引用文献数
39 47

サツマイモに最も近縁な種Ipomoea trifidaは二倍体から六倍体をふくむ倍数体複合種である.I. trifidaの二倍体(K221,B1B1,2n=30)と四倍体(K223,B2B2B2B2,2n=60)をもちいて合成した六倍体(SH,2n=90)は,サツマイモ(2n=6x=90)と同じゲノム構成B1B1B2B2B2B2をもつとされている. I. trifidaの自然三倍体(K222,2n=45)の相互交雑よつ生じた誘導六倍体(DH,2n=90)および自然六倍体(K123,2n=90)のゲノム構造を明らかにするため,DH,K123,SH,サツマイモの間のF1雑種,またそれらの戻し交雑(BC1)と復交雑の後代植物の減数分裂・第一分裂中期の染色体体合を観察した.これら六倍体には1ゲノムが4重になっている部分があると推察された.そこで,両親のもつ4重ゲノム間の相同性を確かめるため,BC,や複交雑からの後代をも供試された(表1).その結果,誘導六倍体と自然六倍体K123は,合成六倍体やサツマイモと同じゲノム構造をもつことが判明した(表3).
著者
井上 頼数 渋谷 正夫 鈴木 芳夫
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.202-206, 1955-12-25 (Released:2008-05-16)
参考文献数
13

In order to study the effect of moisture on the vernalization of seed in Japanese radish, Rapfaaleus sativus L., some experiirnents, were held in 1951, usingi the stock seed of. Nerima-shiriboso variety. In each treatment, the seed was placed, in Petris dish which was put in desicator. Moisture treatments were as follows:,
著者
森島 啓子
出版者
Japanese Society of Breeding
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.265-274, 1975-10-31 (Released:2008-05-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

ダリスグラスはアポミクシスを行う多年草で,わが国には牧草として導入される以前から雑草として定着している。本実験はこの種の持つ雑草性,すなわち撹乱環境に対する適応性の機構を知るために行なったものである。熊本・宮崎・静岡の各県で採集した20の自生集団を用いて,1)各種形質の変異,2)ふみつけ反応性,3)スズメノヒエおよびメヒシバとの競争を調査した。得られた主な結果は次のとおりである。 有性生殖する他の種に比べて遺伝的変異は著しく少なかった。しかし集団間および集団内に遺伝的変異が存在することが確められた。さらに,各地区の分布中心の集団より周辺の集団の方が遺伝的変異を多く含む傾向が見出された。このことはまれに起る有性生殖によって遺伝的変異を増した集団が新しい生育地に移住したことを示唆する。また,ふみつけに対する抵抗性を持つこと,表現型可変性が大きいこと,他種が占有している場所では幼植物は死亡しやすいが,混みあっていない場所では旺盛に生長し他種に勝つことなどが明らかになった。 ダリスグラスの雑草性は,ストレス抵抗性,競争力,大きい表現型可変性,無性的な種子による移住力に基づいているのであろう。その雑草性を発現する遺伝子型はアポミクシスによってそのまま繁殖すると考えれる。
著者
Okazaki Keiichi Asano Yoshito Oosawa Katsuji
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.59-64, 1994
被引用文献数
7

オニユリ,エゾスカシユリ等の交雑から育成されたアジアティックハイブリッド(以下AH)は豊富な花色や栽培が容易な特性を持つ.一方,ヤマユリ,カノコユリ等の交雑から育成されたオリエンタルハイブリッド(以下OH)は大輪で香りのある花を持つ.これら2つの品種群はユリ類の中ではともに重要な品種群であり,相互に優良形質を導入することが望まれているが,この品種群間の交雑は極めて困難とされてきた.また,ユリの遠縁交雑では,胚が形成されてもその大きさは極めて小さく,胚培養での培養成功率は低い場合が多い.そこで,摘出胚(0.1~2.0mm)に対する糖・植物ホルモン,アミノ酸の効果を検討し胚培養成功率の向上を図るとともに,その改良した培地を用いて上記品種群間の雑種育成を図った.OHの品種間交雑胚は,3%薦糖を含む培地では全く生長しなかったが,6,12%の薦糖を含む培地および4%照糖,4%マンニトール,4%ソルビトールを同時に含む培地で高率に生長した.AHの交雑胚は,3%薦糖を含む培地でも交雑胚の生長がある程度見られたが,高濃度の糖を含む培地で生長が著しく促進された.高精濃度区の胚の生存率は,培養7週間後の48.1~94.1%から培養5ヵ月後には9.1~70.0%に低下した.特にAHの12%薦糖区の生存率は,84.8%から9.1%に著しく低下した.OHの種間交雑胚1`カサブランカ'×(ヤマユリ×タモトユリ)1を3,6,9%蔗糖を含む培地で培養したところ,9%蔗糖区では胚の異常生長や生育停止が見られ,生存率は比較的低く,5ヵ月後の生存率はそれぞれ2.8,36.7,16.7%であった.品種間および種間交雑の結果を考え合わせると,本試験で扱った交雑胚に対する最適薦糖濃度は6%であると思われた.薦糖とマンニトールを加えた培地においても,高率に胚の生長がみられた.9%薦糖区と,ほぼ同モル数の糖(照糖+マンニトール)を含む区を比較すると,後者において胚の奇形発生率が低く生存率が高い傾向にあった.3%薦糖区および高精濃度区に各種植物ホルモン,プロリン,カゼイン加水分解物を添加したところ,両区とも胚の生存率は向上しなかった.ピクロラム0.01~1mg/l,BA0.02,O.2mg/l,およびこれらを組み合わせて添加したところ,胚の肥厚や湾曲などの奇形が見られた.花柱切断受粉を用いたOH(♀)とAH(♂)の交雑では,花粉管が子房に侵入したが,逆交雑では花粉管の伸長は著しく阻害され子房への侵入は見られなかった.交配した57花中,44花が結実し,全部で0.1~0.8mmの大きさの106個の胚が得られた.得られた胚を培養したところ,3%薦糖区では胚の生長は見られなかったが,4%薦糖,4%マンニトール,4%ソルビトールを添加した区では,胚の生長が見られ植物体が得られた.この植物は,葉の形態特徴や酸性フォスファターゼアイソザイムの分析によって雑種であると判定された.OHとAHの雑種が育成できたとする報告は一例あるものの,育成個体の雑種性が確認されていない.本実験では,改良した胚培養培地を用いることによってOHとAH間の雑種を育成した.また育成個体の雑種性も明らかにした.
著者
Binet F.E. 志方 守一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.93-99, 1971

伴性、および常染色体遺伝子座における同型接合体頻度を示す数式表現、およびその数値計算を、同胞交配の場合についておこなった。計算に際して用いたモデルは、伴性遺伝子座については3対立遺伝子、常染色体遺伝子座については2対立遺伝子を想定し、いずれの場合も1遺伝子座を考慮した。前老については遺伝子型頻度を用いず、交配型を用い、後者については遺伝子型頻度の1種の平均値を用いた。双方につき、代数的表現を導くとともに、数値計算を例について行ない、表に収めた。後者の例については、BINETとLESLIE(1960)の結果が本報告の特殊例であることを指摘した。BINETとLESLIE(1960)は2倍体の2つの対立遺伝子について兄弟姉妹交配を続けた場合の第γ番目の世代におけるヘテロ接合子の頻度は、最初のヘテロ接合子頻度のh<SUB>r</SUB>倍であることを示した。ここではh<SUB>r</SUB>はh<SUB>r</SUB>=0.948<SUB>e</SUB><-0.212r>[1+(-1)<SUP>r</SUP>・0.0557<SUB>e</SUB><-0.952r>].本報告では、この結果との比較をも行なうこととする。第1の場合として、2種類の性によってのみ生殖が起る場合を想定し、それら2種類の性をXXおよびXYでそれぞれ表わす。3種類の対立遺伝子をO、A、Bとし、X<SUB>A</SUB>、X<SUB>B</SUB>、X<SUB>O</SUB>の如くに性染草体上に置かれた遺伝子を(A)、(B)、(0)と書くことにし、それらにより作られる遺伝子型を(OO)、(OA)、(OB)、(AA)などと書く。これらの遺伝子または遺伝子型を交配する時の交配型を本文中の表の如く4つの型に類別し、この4種類の交配型の第γ世代における頻度r<SUB>P</SUB>_m,(m=I,II,III,IV)を求めることができて、表IIの如き結果が得られる。常染色体については、同じく兄弟姉妹交配を繰返すとき、近交係数の回帰方程式を書き下すことが知られている。この回帰方程式に適当な初期条件を与えることにより、ヘテロ接合子あるいはホモ接合子の各世代における頻度を計算することが可能である。本報告では、最初に掲げたBINETとLESLIE(1960)の求めたヘテロ接合子の頻度を求める式が、特定の初期条件にのみ対応するものであることを指摘し、一般化近交係数を用いてベクトル方程式を考慮することにより、可能な初期条件のうち任意の条件から出発して逐次、各世代のヘテロ接合子頻度を求めうることを示した。伴性遺伝子、常染色体遺伝子の双方につき、兄弟姉妹交配の繰返しによるヘテロ接合子頻度を何世代かについて例示し、作表した。本報告で触れた回帰方程式、および数値計算結果の性質については、次の機会に述べたい。
著者
志方 守一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.307-314, 1968

同胞交配を仮定し、近交係数における交叉の影響を数値的に調べた。例として、2遺伝子座の場合をとり、近交係数の数式表現を示し、それに各種の初期条件を与えて数世代の近交係数の変化を計算した。組み換えの確率として、7種類の確率を用いた。多くの場合に比較的大きい交叉の影響が認められた。
著者
加藤 恒雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.431-438, 1989-12-01
被引用文献数
3

粒大,粒数等,シンク関連形質が大きく異なるイネ29品種(Table1)を用いて,受精後の粒重増加・過程とシンク関連形質との関係を観察し,前者の遺伝的変異に後者のどのような形質が関与しているのかを検討した.ここでは,粒重増加過程を直線的粒重増加期における粒重増加速度と,最終粒重を粒重増加速皮で除した粒重増加期間とで表現した. その結果,粒重増加速度は最終粒重および粒大に関する形質との間に強い正の相関を,また粒数に関する形質との間に負の相関を示した(Table2).シンク関連形質内では粒大と粒教との間に負の相関が見られた(Table2).正準相関分析の結果,粒重増加速度は粒数よりも粒大と密接に関係していることが示唆された(Table3)、粒重増加速度は粒大に関わる何らかの要因によって制御されていると考えられる. 粒重増加速度と粒大との強い相関関係から,粒重増加速度は粒大に関する選抜によって間接的に,かつ比較的容易に選抜できることが期待される.また,大粒化によって粒重増加速度が速くなると胚乳組織がその影響をうけ,結果的に腹白米,心白米等が出現することが予想される.従って,粒重増加速度と粒大の相関は,大粒で良質なイネ品種の育成を困難にするが,他方,酒米品種の育成には好都合であると考えられる. 一方,粒重増加期間は粒重増加速度とも,またいずれのシンク関連形質とも有意な相関を示さなかった(Table2).粒重増加期間とシンク関連形質との間に相関がないことは,様々なシンクをもつものの登熟性等を粒重増加期間の調節によって改良しうることを示すと考えられる.さらに粒重増加速度と粒重増加期間は互いに異なる機構によって制御されていることが示唆される.
著者
徳増 智 加藤 正弘 矢野 文香
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.269-276, 1974
被引用文献数
3 2

(1)Pelargonium属植物の栽培種は観賞用および香料用に用いられているが,一般に不稔性が高く,種間交雑は困難である。本論文ではPelargoniumの数種を用いて相互に交雑を行ない,鐙光顕微鏡を用いて雌蕊における花粉管の行動を観察し,また結莢,結実の状態を調査しその結果から種間の交雑親和関係を推定した。(2)用いた材料はゼラニウム P.hortorumの2倍体(2n=18)と4倍体(2n=36)各1品種,ペラルゴニウム P.domesticum(2n=44)2品種,アイビーゼラニウム P.peltatum(2n=18)1品種,匂いゼラニウムのうち P.crispum(2n=22)3品種,P.quercifolium(2n=44)1品種,ブルボン P.roseumの2倍体(2n=77),3倍体(2n=115)および4倍体(2n=154)である。(3)交配の結果との組合せにおいても花粉は柱頭上でよく発芽した。発芽した花粉管は多くの組合せで柱頭または花柱組織内に侵入し,あるものはそこで伸長を停止した。また自家受粉,同一種内の品種問交配,および匂いゼラニウム内の種間交配では花粉管は子房に侵入した。花粉管が子房に到達したもののなかで多くのものが結莢したが,種子の得られたのは P.crispum の3品種間交配のほかは自家受粉によるもののみであった。
著者
朴 仁根 角田 重三郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.404-410, 1983
被引用文献数
2

韓国の日印交配系統3品種(維新,密陽21号,密陽23号),それらの親として使われたインド型2品種(台中在来1号,IR8), 日本型1品種(ユウカラ)の幼苗を昼23゜,夜18℃の温度条件下で28~33日間育てた後,高温処理(昼30゜/夜25℃,3日)および低温処理(昼17゜/夜12℃,3日および7日)し,最上展開葉より数えて第2位の着生展開葉の光合成速度を28±2℃下で測定し,その葉の葉面積および水分合最,乾物重,葉緑素含量,窒素含量,可溶沐糖含量,でんぶん含量を測定した。その結果低温処理により炭水化物が葉中に蓄積し,この蓄積はまず可溶性糖で,ついででんぷんの形でおこり,またその蓄積の程度に品種間差異が認められた。そして,高温3日区と比べ,低温3日で大幅に光合成速度(葉面積当り)が低下した品種ほど,低湿3日で大幅に可溶性糖+でんぷんの含有率(対乾物重)が増加した(r=-0.847,α<0.05)。また,高温3日区と比べて低温7日で大幅に光合成速度が低下した品種ほど,低温7日で大幅にでんぶん含有量が増加した(r=-0.855,α<0.05)。一方,低温処理により葉緑素含量,窒素含量(いずれも葉面積当り)が低下し,その低下の度合に品種間差が認められた。そして,高温3区に比べ,低温7日で大幅に葉緑素食含量,窒素含量が低下した品種ほど,低温7日で大幅に光合成速度が低下した(それぞれr=+0.961,α<0.01, r=+0,822,α<0.05)。水分含量も低湿処理によって減少し,低温7日区における光合成速度と水分含量との間には正相関(r=+0,953,α<0.01)が認められた。供試品種のうち,低温処理による可溶性糖,でんぶんの蓄積,葉緑素含量,窒素含量,水分含量の低下が顕著でなく,低温区でも比較的高い光合成速度を保った品種は日本型のユウカラであり,これらの成分含量の変化と光合成速度の低下の最も顕著であったのはインド型のIR8であった。日印交配系統内でも,品種間差が認められた。 以上の結果は,葉中における可溶性糖,でんぷんの蓄積が,葉緑素含量,窒素含量の低下と共に,稲品種の光合成の低温感受性と関係があることを示唆する。
著者
江川 宜伸 田中 正武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.50-56, 1984
被引用文献数
14

トウガラシは新世界に起原した栽培植物で,4つの栽培種を含んでいる。C.chinenseは,アマゾン低地で広く栽培されており,同所的に分布しているC,frutescensがその祖先野生型である。C.baccatumは,栽培型と野生型の2つのvarietyから成り,栽培型var.pendulumは,ペルー及びボリビアで主に栽培されており,祖先野生型Var.baccatumは,ボリビア低地から高地にかけて自生している。筆者らは,南米で収集したこれらの種の系統間の類縁関係を明らかにするため種内及び種間雑種を作出し,その染色体対合を観察した。その結果,C.baccatumの種内雑種はすべて12"の正常な染色体対合と高い花粉稔性を示した。又,C.frutescensの種内雑種,及びC.chinenseとC.frutescensとの種間雑種も12"の対合と高い花粉稔性を示した。このことは,この両種の形態的類似性と考え併せて,C.chinenseとC.frutescensは,異なる種ではなく,ひとつの種と考えるべきであることを示唆している。C.baccatumとC.frutescensとの種間雑種では,多価染色体が観察された。又,一価の出現頻度が低く,これらの二種は,共通ゲノムを有すると結論された。この雑種の稔性は,極めて低く,C.baccatumとC.chinense/C.frutescensとの間には,生殖隔離が発達している。 本研究結果と野生型の地理的分布を考えると,これらの種は,元々或る共通の祖先種から一元的に起原し,その後地理的に隔離され,生殖隔離を生じたものと結論される。
著者
山田 利昭 堀野 修 佐本 四郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.191-196, 1979
被引用文献数
1

イネ白菜枯病抵抗性遺伝子源の探索を目的として,日本在来稲34品種に日本産のイネ白菜枯病菌I~V群菌を接種し,抵抗性検定を行ったところ,新たに15品種の早稲愛国群品種が見いだされた。このことから日本在来稲の中にも,早稲愛国3号以外に,相当数の早稲愛国群品種が存在することがわかった。また,それら15品種のうち,とくにゴマシラズは本群品種を侵すlVおよびV群菌に対して強い量的抵抗性を示す品種であり,今後の本病抵抗性育種素材として有望と考えられた。一方,上記工5品種の玄米性状についてみると,15品種のうち12品種が儒性,3品種が綾性であり・濡性品種が大半を占めた。また,これら品種の水陸稲の別についてみると,13品種が水稲,2品種が陸稲であり,水稲儒性品種の多いのが特徴的であった。