著者
徳田 安章
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, 1960

著者等はさきに「表在性膿皮症の抗生物質軟膏療法の基礎的研究」として,現在市販に供されている凡てを含む13種類の抗生物質の各種軟膏について種々の観点から検討を施した.抗生物質軟膏療法を論ずるにあたり,著者等は次のごとき諸問題を解決しなければならないと思惟するものである.即ち1)当該抗生物質のin vitroの抗菌力 2)原因菌の感受性 3)軟膏貼用局所皮膚の抗生物質濃度 4)軟膏中抗生物質の力價の持続性 5)軟膏からの抗生物質の遊離度 6)軟膏中の抗生物質の協力作用 7)抗生物質軟膏の肉芽形成に対する影響 8)刺戟又は感作による接触性皮膚炎等アレルギーの発生頻度等である.かくてその大部分の抗生物質軟膏については以上の諸條件を詳細に檢討し,その結果はすでに報告したが,國産のGramicidin-J(GRMN-Jと略称する)のみは水に極めて難溶性であり,且つcyclic hexapeptideの高分子構造をなすため定量が困難となり,経皮滲透量を測定し得る定量法を当時は見出し得なかつたので併せ論ずることが出来なかつた.今囘,著者はその補遺としてGRMN-Jの定量法並びに種々の軟膏基剤に配合した時のGRMN-Jの経皮滲透量を測定し若干の知見を得たので報告する.
著者
谷奥 喜平 徳田 安章 小泉 雄一郎 山田 佳也 中山 創生
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, 1959

現在市販されている抗生物質軟膏としては,ペニシリン(PC)軟膏,クロールテトラサイクリン(CTC)軟膏,オキシテトラサイクリン(OTC)軟膏,テトラサイクリン(TC)軟膏,クロラムフエニコール(CP)軟膏,エリスロマイシン(EM)軟膏,ロイコマイシン(LM)軟膏,バシトラシン(BTRC)軟膏,フラシオマイシン(FRM)軟膏,グラミジン・J(GRMN-J)軟膏,コリスチン(Colistin)軟膏j,ポリミキシン・B(PMX-B)軟膏等があり,これ等の合剤としてはBTRC-FRM軟膏,GRMN-DHSM(ジヒドロストレプトマイシン)軟膏,BTRC-Colistin軟膏等,更にFRMーハイドロコーチゾン軟膏がある.且これ等の軟膏基剤としては主として白色ワゼリン,親水ワゼリンであるが,極く一部では親水軟膏(CP),ソルベース(GRMN-DHSM)が用いられている.又その軟膏中の抗生物質濃度は大部分5mg/gで,一部では10mg/g(CP),又は30mg/g(TC系3剤)である.以上の如き抗生物質軟膏基剤が主として白色ワゼリンであり,尚その濃度が同じく5mg/gである理論的実驗的根據が殆ど知られていない.他方最近PC・アレルギーに於ける感作源,誘発源として抗生物質が注目されている.・に於て我々は抗生物質軟膏療法の実驗的研究を企てた次第である.我々は抗生物質軟膏の選擇は次の基準によつて行うべきものと考えている.即ち 1)当該抗生物質のin vitro抗菌力 2)原因菌の感受性 3)軟膏貼用局所皮膚の抗生物質濃度 4)軟膏中の抗生物質力價の持続性 5)軟膏からの抗生物質の遊離度 6)軟膏中の校正物質の協力作用 7)抗生物質軟膏の肉芽組織に対する影響 8)刺戟又は感作による接触性皮膚炎等アレルギーの発生頻度 我々はPC等13種類の抗生物質を夫々白色ワゼリン,親水ワゼリン,吸水軟膏,親水軟膏,ソルベース,カーボワックスに配伍した抗生物質軟膏に就て,以上の8項目を檢討して,次に述べるが如き結果並びに結論を得たから,・に報告する次第である.