著者
徳田 直子 杉澤 秀博
出版者
桜美林大学
雑誌
老年学雑誌 (ISSN:21859728)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.39-54, 2011-03-20

男性の場合,高齢期の生活に対して定年退職前の就業経験が大きく影響し,定年後の生活への適応に努力を要する場合が少なくないことなどが,量的・質的分析で行われた先行研究で明らかになっている.しかし,女性の場合,定年を伴うような職業キャリアを経験した人が絶対的に少ないこともあり,高齢期の生活に現役時代の経験がどのように影響しているかについてはほとんど研究されていない.本研究では,対象を女性に限り, 10名の女性定年退職者にインタビューを行い,定年退職後の生活の楽しみ・生きがいに対して,退職前の職業・家庭・地域生活がどのような影響をもたらしているかを質的に分析した.分析の結果,既存の研究で明らかにされた男性の知見と異なり,本調査の対象となった女性たちは,職業経験と全く別の世界を志向する傾向も見られ,定年後の生活に概ねスムーズに適応していることが示された.