著者
小浦 さい子 杉澤 秀博 Saiko Koura Hidehiro Sugisawa
出版者
桜美林大学大学院老年学研究科
雑誌
老年学雑誌 (ISSN:21859728)
巻号頁・発行日
no.1, pp.15-27, 2011
被引用文献数
2

本研究の目的は,特別養護老人ホームで働く介護職員が摂食・嚥下障害を伴う入居者の食事介助体験を通じて,どのように安全を意識し,食事介助に対する態度を形成するようになるのか,そのプロセスを明らかにすることにある.分析対象は10名,分析には修正版グランデッド・セオリー・アプローチを用いた.その結果,第1ステップとして,予測できない出来事に遭遇するという辛い体験が,以前よりも強く安全を意識することにつながること.第2ステップでは,安全を意識するようになった結果,食事に対して命を守るという責任の自覚をすることになり,入居者にとって食べることの意味との間でジレンマを感じるようになること.第3ステップとして,このようなジレンマをかかえつつ,食べることの意味が大きいと判断した場合には創意工夫などチャレンジ的な態度を,命を守る責任感の方が強い場合には無理に食べさせないなど無難な対応をするようになる結果が得られた.
著者
徳田 直子 杉澤 秀博
出版者
桜美林大学
雑誌
老年学雑誌 (ISSN:21859728)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.39-54, 2011-03-20

男性の場合,高齢期の生活に対して定年退職前の就業経験が大きく影響し,定年後の生活への適応に努力を要する場合が少なくないことなどが,量的・質的分析で行われた先行研究で明らかになっている.しかし,女性の場合,定年を伴うような職業キャリアを経験した人が絶対的に少ないこともあり,高齢期の生活に現役時代の経験がどのように影響しているかについてはほとんど研究されていない.本研究では,対象を女性に限り, 10名の女性定年退職者にインタビューを行い,定年退職後の生活の楽しみ・生きがいに対して,退職前の職業・家庭・地域生活がどのような影響をもたらしているかを質的に分析した.分析の結果,既存の研究で明らかにされた男性の知見と異なり,本調査の対象となった女性たちは,職業経験と全く別の世界を志向する傾向も見られ,定年後の生活に概ねスムーズに適応していることが示された.
著者
東方 和子 澤田 みどり 生田 純也 新野 直明 Kazuko Tobo Midori Sawada Junya Ikuta Naoakira Niino
出版者
桜美林大学大学院老年学研究科
雑誌
老年学雑誌 (ISSN:21859728)
巻号頁・発行日
no.1, pp.29-38, 2011

通所介護施設を利用する虚弱な地域在住高齢者の精神健康と活動能力に対する園芸活動プログラムの効果を調査した.園芸活動プログラム(週1回4か月間)に参加した高齢者7名を実施群,園芸活動のない通常のデイサービス利用者10名を非実施群として,精神健康と活動能力について,調査票を用いてプログラム前後の状態を調べた.実施群において有意な精神健康の上昇が示され,非実施群では高次の活動能力に有意な低下があったが,実施群では維持されていた.以上の結果,園芸活動プログラムが虚弱な地域在住高齢者の精神健康,活動能力向上に効果がある可能性が示された.