著者
志佐 誠 高野 泰吉
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.140-146, 1964 (Released:2007-05-31)
参考文献数
20
被引用文献数
21 20

バラの花色発現に及ぼす温度ならびに光の影響を花弁の解剖学的観察, 色彩論的測色ならびに色素分析によつて明らかにした。クリムソングローリーの花弁における表皮細胞のタテ/ヨコ比は低温において大きくビロード感がよくあらわれるが高温ではこの比が小さく, ビロード感がなくなる。花色は低温で濃赤色を呈し, 高温では桃ないし白色を呈する。色彩論的には高温においては固有の赤色に対して紫味を帯びた色相になる。明度は濃淡と逆の関係にある。アントシアニン含量は30°Cにおいて0.063% (対新鮮重), 23°Cにおいて0.155%で, 低温の側で色素形成量が多い。マスケラードの色変りは黄-桃-赤-濃赤の経過をたどるが, 花に着色セロフアンを被覆すると赤色を発現しない。したがつて, マスケラードにおけるアントシアニンの形成は光の影響によるものと思われる。花の齢の進行に伴ないアントシアニンは増加するが, とくに開花後7~10日ごろに著しく増加する。その色素成分はシアニン, クリサンテミンからなるが, とくにクリサンテミンの著しい増加がみとめられる。