著者
朝隈 真一郎 志多 享
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.489-494, 2001-05-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
44
被引用文献数
6 5

最近10年間に本邦で報告された, 突発性難聴の治療成績について記述された論文をもとに, その治療成績の変遷を調べた. 検討した論文の症例数の合計は3430例で, 治療成績は, 治癒30.8%, 著明回復24.7%, 回復23.3%, 不変21.8%であった. 年度別にみた治療成績では10年間でほとんど変化はなかった. 各論文で報告された治癒率と検討された症例数の関係を調べた. その結果, 症例数の少ない論文で報告された治癒率はそのばらつきが大きく, 症例数が多くなるほどそのばらつきは小さくなり30%付近に集まる傾向が見られた. 信頼できる治療成績を得るためには200以上の症例での検討が必要と思われた. 様々な治療法が検討され, どれも突出して有効な治療成績を挙げることができないことを考えると, 突発性難聴全体に有効な治療法はないのではないかと思われる. 今までのように, 突発性難聴を一纏めにして治療効果を判定しようとしても有効な治療法を見付けることは難しいのではないかと考えられる. 少数にでも良いから, 確実に有効であると判断される治療法を探すことも試みられて良いのではないか.