著者
志戸岡 惠子 内藤 直子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.26-35, 2019 (Released:2019-04-20)
参考文献数
21

慢性期脊髄損傷 (脊損) 者の排便形態・便失禁の有無が, 自尊感情 (自尊) と自己効力感 (効力) に与える影響の明確化を試みた. Webと郵送募集に応じた対象者114人 (男92, 女22) に, 調査票を配付した. 対象者の年齢中央値は47歳 (8-80) , 脊損後経過年数中央値は14年 (1-55) であった. 排便形態は, 摘便・坐薬・浣腸が96人, 人工肛門が5人, また, 便失禁あり (失有) 85人, なし (失無) 29人であった. 自尊指標平均値は, 失有群26.1±7.0で, 失無群の29.4±6.1より有意に低かった (P=0.027) . また, 人工肛門群は33.6±6.1で, 摘便・坐薬・浣腸群の26.8±6.9より有意に高かった (P=0.034) . さらに, 便失禁頻度が「月数回」の場合に, 他の群より有意に高かった (P=0.042, ANOVA) . 一方, 失有群の効力指標平均値は8.4±4.2で, 失無群の10.2±4.4より有意に低かった (P=0.045) . 排便形態, 便失禁頻度による差はなかった.  本研究では, 脊損者の便失禁が自尊・効力の低下に影響し, また脊損者が自ら選択した排便形態に適応していることが明らかになった.