著者
内藤 直子
出版者
大阪歴史博物館
雑誌
大阪歴史博物館研究紀要 (ISSN:13478443)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.0051-0062, 2012 (Released:2022-06-19)

天明元年(一七八一)に大坂で出版された『装剣奇賞』は初の本格的な細密工芸の作家名鑑として、刀装具や根付研究に今なお大きな影響を与えているが、その意義や筆者稲葉通龍については、昭和十六年の後藤捷一『稲葉通龍とその著書』以降、大きな進展がなかった。本稿は、大阪府立中之島図書館本(開板出願用の手稿本)、住吉大社本(奉納された初版本)、大阪歴博本(普及本)の三種の本をもとに、本書の成立について時系列的に考察を行った。その過程で、混沌詩社や木村蒹葭堂との接点、さらには安永四年(一七七五)刊行の『浪華郷友録』との類縁性に注目し、本書は大坂の文化ネットワークに組み込まれ得るとの視点を呈示した。一方、七巻に掲載されている根付師については同時代の大坂の出版物との異同表を作成し、当時の生業としての根付師の置かれた立場について、未だ余技的な要素が残るもののひとつのカテゴリーとして自立しつつあった状態ではないかとの推論を述べた。
著者
内藤 直子
出版者
(財)大阪市文化財協会
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2006

刀装具蒐集に関する基礎情報として、光村氏が心血を注ぎ完成した『鏨廼花』のデータベース化を行うと共に、作成に当たっての収集情報を書き留めたメモ集を報告書に再録した。加えて、これまで注目されていなかった幸野楳嶺門下の画家との交流及び収集作品の特定を行うための基礎資料を収集し、報告書中にまとめた。今回の研究では、彼のパトロン活動が特に活発であった時期を明治30年代後半期に特定できるのではないかという仮説を提起するに至るとともに、研究過程では新出資料の発見や、既出資料の新たな側面を見いだすに至った。
著者
志戸岡 惠子 内藤 直子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.26-35, 2019 (Released:2019-04-20)
参考文献数
21

慢性期脊髄損傷 (脊損) 者の排便形態・便失禁の有無が, 自尊感情 (自尊) と自己効力感 (効力) に与える影響の明確化を試みた. Webと郵送募集に応じた対象者114人 (男92, 女22) に, 調査票を配付した. 対象者の年齢中央値は47歳 (8-80) , 脊損後経過年数中央値は14年 (1-55) であった. 排便形態は, 摘便・坐薬・浣腸が96人, 人工肛門が5人, また, 便失禁あり (失有) 85人, なし (失無) 29人であった. 自尊指標平均値は, 失有群26.1±7.0で, 失無群の29.4±6.1より有意に低かった (P=0.027) . また, 人工肛門群は33.6±6.1で, 摘便・坐薬・浣腸群の26.8±6.9より有意に高かった (P=0.034) . さらに, 便失禁頻度が「月数回」の場合に, 他の群より有意に高かった (P=0.042, ANOVA) . 一方, 失有群の効力指標平均値は8.4±4.2で, 失無群の10.2±4.4より有意に低かった (P=0.045) . 排便形態, 便失禁頻度による差はなかった.  本研究では, 脊損者の便失禁が自尊・効力の低下に影響し, また脊損者が自ら選択した排便形態に適応していることが明らかになった.
著者
内藤直子著
出版者
淡交社
巻号頁・発行日
2017
著者
白井 瑞子 内藤 直子 益岡 享代 真鍋 由紀子 山本 文子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.87-97, 2004-04
被引用文献数
3

本研究では,高校生(男女)が月経をどのようにイメージしているかを,初めての月経教育時に抱いた月経観,印象に残っているトピック,および女子の月経痛との関連から調査した。提示した月経イメージ10項について因子分析を行い,困難因子(つらい,いやなもの,腹立たしい),成熟因子(女性の特質,大切・必要なもの),嫌悪因子(暗い,病気のような,汚らわしい,怖い)が抽出された。3因子の平均は,困難因子3.52±0.99,成熟因子4.01±0.94,嫌悪因子2.19±0.84であり,困難因子点は,女子の中では月経痛レベル4以上で高かった。初めての月経教育で,男子は月経を肯定的・中立的に,女子は否定的・両価的にとらえる者が多かった。また,初めての月経教育が印象深いと,月経を肯定的に受け止め,成熟因子点が高く,困難因子点,嫌悪因子点が低かった。この結果をふまえて,高校生に対して月経を健康のバロメーターとして,および性行動か活発化している現状に役立つ教育を行う必要があることを提言した。