著者
宮崎 昭 志水 正典 石田 元彦 川島 良治
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.151-156, 1984-07-31 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
1

近年,水系の富栄養化が進むにつれて,ホテイアオイが急速に生育域を広げている。しかし未だ効果的な防除方法がないので,それを飼料として利用する可能性を調べた。滋賀県西の湖,京都府巨椋および京都大学農学部の用水路または水槽に生育するホテイアオイを,6月から11月にかけて,1ヵ月ごとに採集し,上部(葉身および葉柄)と下部(根)とに分離して飼料成分を調べた。その結果,ホテイアオイは水分含量が著しく高く,新鮮物中93%にも及び,乾物含量はわずかに7%程度であった。飼料成分の生育場所ごとの差異は,有機物,粗蛋白質,炭水化物,粗灰分,NDF,総エネルギー含量および細胞壁構成物質(CW)のin vitro消化率について,5%水準で有意であり,ホテイアオイの飼料成分は生育環境の影響を強く受けることが知られた。なかでも粗灰分含量が乾物中11.8%から20.0%と変異が大きく,また含量も著しく多いこと,さらに粗蛋白質含量も12.3%から19.5%と比較的多い点が注目された。とくに,生活廃水の流入が著しい巨椋で採集されたホテイアオイは,他の2ヵ所でえられたものと比較して,乾物中の粗灰分と粗蛋白質含量が多いようであった。ホテイアオイの飼料成分の季節的変化は,6月から11月にかけての刈取時期別に多少の変化がみられるものの,一般の陸生植物に比較すればかなり小さかった。ただし,6月から8月にかけて採集されたものは,それ以降のものに比較して,乾物中に有機物と炭水化物含量がやや少なく,逆に粗灰分含量が多く,そのため総エネルギー含量がわずかに低かった。ホテイアオイの植物部位別飼料成分は,有機物,炭水化物およびNDF含量が上部に少なく,逆に粗蛋白質,粗脂肪および粗灰分含量が上部に多かった。なお,植物体上部の乾物中のCW含量は6月から10月にかけては70%前後であったが,11月に採集したものではと低く,また,そのin vitro消化率は11月にはとくに低くなっていた。これはホテイアオイの生育が低温のため停止しはじめたことと関連があるようであった。