著者
松山 裕城 堀口 健一 高橋 敏能 萱場 猛夫 石田 元彦 西田 武弘 細田 謙次 朴 雄烈
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.395-404, 2004 (Released:2006-07-26)
参考文献数
37
被引用文献数
2 2

第一胃刺激用具(RF)の投与およびサイレージ調製したビール粕の給与が,圧ペン大麦主体の濃厚飼料多給与条件下の去勢牛から発生するメタンに及ぼす影響について検討した.供試動物は,ホルスタイン種去勢雄牛4頭(平均体重698kg),給与飼料は,チモシー乾草(TH),ビール粕サイレージ(BS),圧ペン大麦および大豆粕を用いた.給与量は,代謝エネルギー換算で維持要求量とした.処理は,TH配合の飼料とBS配合の飼料のRF無投与処理,それぞれの飼料給与時にRFを1頭あたり3個ずつ,経口的に第一胃へ投与したRF投与処理の合計4処理とした.その結果は,以下の通りであった.1)乾物の消化率は,BS配合の飼料給与時がTH配合の飼料給与時に比べて有意に低く(P<0.01),RFを投与することでは有意に高くなった(P<0.05).2)一日可消化有機物1kg摂取量あたりのメタン発生量は,飼料間に差がなかったが,RFの投与では有意に減少した(P<0.01).3)第一胃内容液のpHは,いずれの処理においても差がなかった.プロトゾア数は,飼料間に差がなかったが,RFの投与では有意に減少した(P<0.05).4)液相部と固相部の第一胃通過速度は,RFを投与すると有意に高まった(P<0.05).これらの結果から,圧ペン大麦主体の濃厚飼料多給与条件下の去勢牛から発生するメタンは,BS配合の飼料を給与しても影響がなかったが,RFを投与すると消化率を低下させることなく,メタン発生量を抑制することが可能であった.
著者
宮崎 昭 志水 正典 石田 元彦 川島 良治
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.151-156, 1984-07-31 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
1

近年,水系の富栄養化が進むにつれて,ホテイアオイが急速に生育域を広げている。しかし未だ効果的な防除方法がないので,それを飼料として利用する可能性を調べた。滋賀県西の湖,京都府巨椋および京都大学農学部の用水路または水槽に生育するホテイアオイを,6月から11月にかけて,1ヵ月ごとに採集し,上部(葉身および葉柄)と下部(根)とに分離して飼料成分を調べた。その結果,ホテイアオイは水分含量が著しく高く,新鮮物中93%にも及び,乾物含量はわずかに7%程度であった。飼料成分の生育場所ごとの差異は,有機物,粗蛋白質,炭水化物,粗灰分,NDF,総エネルギー含量および細胞壁構成物質(CW)のin vitro消化率について,5%水準で有意であり,ホテイアオイの飼料成分は生育環境の影響を強く受けることが知られた。なかでも粗灰分含量が乾物中11.8%から20.0%と変異が大きく,また含量も著しく多いこと,さらに粗蛋白質含量も12.3%から19.5%と比較的多い点が注目された。とくに,生活廃水の流入が著しい巨椋で採集されたホテイアオイは,他の2ヵ所でえられたものと比較して,乾物中の粗灰分と粗蛋白質含量が多いようであった。ホテイアオイの飼料成分の季節的変化は,6月から11月にかけての刈取時期別に多少の変化がみられるものの,一般の陸生植物に比較すればかなり小さかった。ただし,6月から8月にかけて採集されたものは,それ以降のものに比較して,乾物中に有機物と炭水化物含量がやや少なく,逆に粗灰分含量が多く,そのため総エネルギー含量がわずかに低かった。ホテイアオイの植物部位別飼料成分は,有機物,炭水化物およびNDF含量が上部に少なく,逆に粗蛋白質,粗脂肪および粗灰分含量が上部に多かった。なお,植物体上部の乾物中のCW含量は6月から10月にかけては70%前後であったが,11月に採集したものではと低く,また,そのin vitro消化率は11月にはとくに低くなっていた。これはホテイアオイの生育が低温のため停止しはじめたことと関連があるようであった。
著者
柳井 清治 石田 元彦 矢野 俊博 中口 義次 中谷内 修
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学年報 = [Ishikawa Prefectural University] Annual Report (ISSN:18819605)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.15-34, 2015-10-01

Crop damages by wild boar have been drastically increased in this decade in Ishikawa Prefecture. Comprehensive study against crop damage by them has been carried out for two years by three departments and one institute in Ishikawa Prefectural University. The environmental factors of crop damage were extracted by GIS analysis and MaxEnt model was used to predict where the damages break out. Microsatellite analysis revealed that most of wild boar population in Noto peninsula came from Western Toyama Prefecture. Questionnaire surveys for local farmers suggested that pasturage retarded crop damage by wild boars. Finally, using an appropriate disinfectant in the process of processing, transportation and consumption make it possible for us to utilize wild boar meat safely.
著者
石田 元彦
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学年報 = [Ishikawa Prefectural University] Annual Report (ISSN:18819605)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.14-17, 2011-03-31

The consumption of rice has decreased and the amount of imported feed increased to produce animal products for last fifty years, which resulted in low self-sufficiency in food in Japan. The self-sufficiency dropped from more than 70% in 1960 to 40% in 2010. To improve the self-sufficiency in food, it is important to produce animal feeds in paddy fields in Japan. Whole crop rice silage is produced in more than 10,000 ha of paddy fields in Japan. The production will increase. It has the characteristics to contain higher vitamin E than the other feeds. The vitamin E content in beef produced by feeding whole crop rice silage was found to be higher than that in beef produced by feeding the other feeds such as rice straw to fattening steers. The higher vitamin E can prevent oxidation of fat in beef. It also can reduce the production of metmyoglobin by oxidation of myoglobin, which results in smaller change of color from red to brown in beef. Feeding whole crop rice silage to lactating dairy cows also increased vitamin E content in milk. These findings show the potential to produce higher quality beef and milk by feeding whole crop rice silage.
著者
安藤 貞 西田 武弘 石田 元彦 河智 義弘 加味 亜希子 瀬 寿美子
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.142-145, 2001-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
12
被引用文献数
3 10

乳牛の飼料にシナモン,バジル(ハーブミックス1)及びキャラウエイ,ローズマーリー(ハーブミックス2)からなるハーブミックスを乳牛に給与したところ,1期では牛乳中へハーブ成分の移行が確認され,ハーブミックス1では牛乳臭が低下するなどの風味の改善がみられたが,ハーブミックス2では風味の改善がみられなかった.2期では牛乳中へハーブ成分の移行が確認されなかった.
著者
石田 元彦 福井 憲二 長尾 伸一郎 宮崎 昭 川島 良治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.116-122, 1987-02-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
10

異なる給与飼料条件で飼育された牛が排出した糞の化学成分組成と栄養価を比較, 検討した。青刈トウモロコシ・ソルゴー20kgとふすま1kg (1日1頭あたりの原物重量) を給与された黒毛和種繁殖雌牛の糞, 稲わら1kgと配合飼料9kgを給与された肥育中のホルスタイン種去勢牛の糞 (肥育牛糞A), 稲わらを自由採食, 配合飼料を8kg給与された肥育中のホルスタイン種去勢牛の糞 (肥育牛糞B) および牧草サイレージ, ウイスキー粕, 稲わら等から成る粗飼料を24kg, 配合飼料を9kg給与された泌乳牛の糞をそれぞれ採取し, 60-90℃で通風乾燥したものを供試した。牛糞の化学成分は酸素分析を中心にした分析法で求めた.可消化粗蛋白質 (DCP) と可消化養分総量 (TDN) の含量および細胞内容物 (CC) と細胞壁構成物質 (CW) 画分のみかけの消化率をあん羊を用いた消化試験によって測定した。肥育牛の糞には繁殖牛糞に比べて, CC, “CC内粗蛋白質”とデンプンが多く含まれていた. CW中のリグニン含量は肥育牛糞と泌乳牛糞の方が繁殖牛糞よりも低かった. DCP含量 (乾物%) は肥育牛糞A, 肥育牛糞B, 泌乳牛糞がそれぞれ7.6, 6.8, 5.8で, 繁殖牛糞の3.1よりも高かった。TDN含量 (乾物%) は肥育牛糞A, 肥育牛糞B, 泌乳牛糞がそれぞれ51.2, 40.2, 37.9で, 繁殖牛糞の17.7よりも高かった. 消化率の測定結果から, 牛糞中のCC画分はめん羊によってほぼ完全に消化され, 牛糞中粗蛋白質 (CP) は酸素分析によって消化性の高い“CC内CP”と消化性の非常に低い“CW内CP”とに分けられると推定した. また, 牛糞のCW画分の真の消化率は供試した牛糞ごとに異なることが示唆された. 以上の結果から, 牛糞の栄養価は給与飼料の飼料組成や飼料摂取量によってかなり大きく変動することがわかった.