著者
宮崎 昭
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.116-122, 1969-03-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
18

硝酸塩投与に伴うメトヘモグロビン形成における個体間の差異を検討する目的で,体重35~45kgの成めん羊15頭を用いて,つぎのような試験を行なった.1) めん羊8頭にいろいろな量の硝酸塩を添加した飼料を給与したとき,メトヘモグロビン形成に有意な差異がある個体があり,8頭を2頭ずつ28通りに組合わせると,硝酸カリウムの投与量が体重の0.02%のとき11通り,0.03のとき17通り,0.04%のとき20通りの組合わせに5%水準で有意差があった.2) めん羊4頭に体重の0.035,0.040,0.045%の硝酸カウムをカテーテルで投与したときにも同様に個体差がみられ,経時的にはメトヘモグロビン含量が多いときにとくにそれが著しかった.3) 一定量の硝酸塩の投与に伴うメトヘモグロビン形成に差異があっためん羊3頭について,硝酸塩を摂取した後メトヘモグロンができるまでに経ると思われる各段階について検討してみると,一定量の硝酸塩を第1胃内に注入した後の第1胃内液中の亜硝酸態窒素含量における個体間の差異がもっとも大きかった.ついで一定量の亜硝酸塩を第1胃内に注入した後の血漿中の亜硝酸態窒素含量における差異が大きかった.しかし一定量の亜硝酸塩を血液中に注入した後の血液中のメトヘモグロビン含量における差異はごく小さかった.したがって,硝酸塩の投与に伴うメトヘモグロビン形成における個体差は,主として第1胃内液中の亜硝酸態窒素含量における個体差に由来するのではないかと推察された.4) 以上の結果は,硝酸塩が反芻動物に及ぼす影響を検討する場合,とくに動物個体間の差異を予め考慮しておく必要のあることを示唆するものであろう.
著者
渡辺 晴彦 宮崎 昭 川島 良治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.706-712, 1975-12-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
18

肥育牛に尿素を含む飼料を与えたとき,尿石症の発生が少ない傾向のあることが観察されている.そこで尿石症に対する尿素の作用を確かめるために,めん羊を用いて尿素給与時の水分代謝と尿中ミネラル濃度を検討した.めん羊6頭を2区(だいずたん白質区と尿素区)に分け,予備期14日間,試験期10日間よりなる2期について,ラテン方格法による試験を行った.試験期間中には飲水量,尿量,糞中水分量,尿のpH,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿中のCa, MgおよびP濃度を測定し,その結果を分散分析した.その結果,試験の時期間に有意差(P〈.01)を認めたが,尿素給与の影響のみを調べたところ,代謝体重当たりの尿量は尿素給与時に31%増加し(P〈.05),飲水量は17%増加した.一方,糞中水分量,尿の浸透圧,血液のヘマトクリット値,尿のpH,尿中のCaおよびP濃度には尿素給与による影響はみられなかった.しかし尿中のMg濃度は尿素給与時にやや低かった.そのため,尿素の給与は飲水量と尿量を増加させることによって尿石症の発生を予防するのではないかと思われた.なお,本試験ではめん羊の代謝体重当たりの飲水量と尿量との間には,r=0.931という高い正の相関を認めた.
著者
宮崎 昭 志水 正典 石田 元彦 川島 良治
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.151-156, 1984-07-31 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
1

近年,水系の富栄養化が進むにつれて,ホテイアオイが急速に生育域を広げている。しかし未だ効果的な防除方法がないので,それを飼料として利用する可能性を調べた。滋賀県西の湖,京都府巨椋および京都大学農学部の用水路または水槽に生育するホテイアオイを,6月から11月にかけて,1ヵ月ごとに採集し,上部(葉身および葉柄)と下部(根)とに分離して飼料成分を調べた。その結果,ホテイアオイは水分含量が著しく高く,新鮮物中93%にも及び,乾物含量はわずかに7%程度であった。飼料成分の生育場所ごとの差異は,有機物,粗蛋白質,炭水化物,粗灰分,NDF,総エネルギー含量および細胞壁構成物質(CW)のin vitro消化率について,5%水準で有意であり,ホテイアオイの飼料成分は生育環境の影響を強く受けることが知られた。なかでも粗灰分含量が乾物中11.8%から20.0%と変異が大きく,また含量も著しく多いこと,さらに粗蛋白質含量も12.3%から19.5%と比較的多い点が注目された。とくに,生活廃水の流入が著しい巨椋で採集されたホテイアオイは,他の2ヵ所でえられたものと比較して,乾物中の粗灰分と粗蛋白質含量が多いようであった。ホテイアオイの飼料成分の季節的変化は,6月から11月にかけての刈取時期別に多少の変化がみられるものの,一般の陸生植物に比較すればかなり小さかった。ただし,6月から8月にかけて採集されたものは,それ以降のものに比較して,乾物中に有機物と炭水化物含量がやや少なく,逆に粗灰分含量が多く,そのため総エネルギー含量がわずかに低かった。ホテイアオイの植物部位別飼料成分は,有機物,炭水化物およびNDF含量が上部に少なく,逆に粗蛋白質,粗脂肪および粗灰分含量が上部に多かった。なお,植物体上部の乾物中のCW含量は6月から10月にかけては70%前後であったが,11月に採集したものではと低く,また,そのin vitro消化率は11月にはとくに低くなっていた。これはホテイアオイの生育が低温のため停止しはじめたことと関連があるようであった。
著者
李寧 富岡洋一 宮崎昭彦 北澤仁志
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.117-118, 2014-03-11

近年FPGAの大規模化により,FPGAを用いた並列数値計算においても浮動小数点演算が用いられるようになってきた.本研究ではFDTD法を対象とした浮動小数点演算器の構成法を提案し,Altera社が提供しているメガファンクションやfreeの浮動小数点演算器合成ツールFloPoCoに比較して,チップ内により多くのPEを実装可能であることを示す.
著者
宮崎 昭 丹治 藤治
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.323-327, 2015-04

昭和32年に国の天然記念物に指定された「奈良のシカ」は春日大社の神鹿として,1,200年以上もの長い歴史を生きぬいて今日にいたっている。しかし,シカをとりまく環境はいつの時代にも安泰というわけではなかった。古くは社寺境内ということで聖域とみなされて,殺傷禁断の安住の地であったため,戦前900頭前後で落ち着いていた生息頭数も,戦中・戦後の社会混乱期には激減して,昭和20年には推定頭数がわずか79頭になってしまった。そのような状況の中で奈良の鹿愛護会はシカの保護育成に努力した。頭数は昭和28年には254頭に回復し,さらに食糧事情が好転し経済成長が著しい時代を経ると39年には1,058頭に達した。しかしその後10年間ほどは頭数が逆にいくぶん減少した。
著者
宮崎 昭 丹治 藤治
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.323-327, 2015-04

昭和32年に国の天然記念物に指定された「奈良のシカ」は春日大社の神鹿として,1,200年以上もの長い歴史を生きぬいて今日にいたっている。しかし,シカをとりまく環境はいつの時代にも安泰というわけではなかった。古くは社寺境内ということで聖域とみなされて,殺傷禁断の安住の地であったため,戦前900頭前後で落ち着いていた生息頭数も,戦中・戦後の社会混乱期には激減して,昭和20年には推定頭数がわずか79頭になってしまった。そのような状況の中で奈良の鹿愛護会はシカの保護育成に努力した。頭数は昭和28年には254頭に回復し,さらに食糧事情が好転し経済成長が著しい時代を経ると39年には1,058頭に達した。しかしその後10年間ほどは頭数が逆にいくぶん減少した。
著者
宮崎 昭 上坂 章次 池田 清隆
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.133-140, 1967

イネ科青刈飼料作物の硝酸塩含量の草種,系統による差異を知るために,春の青刈飼料4種,夏の青刈飼料3種をそれぞれ同一条件下で栽培しその硝酸塩を定量した.また青刈トウモロコシについては10系統を用いて同じくその硝酸塩を定量した.第1試験では春の青刈飼料としてエンバク,ライムギ,オオムギ,コムギを用い1965年4月6日から約10日目ごとに5回刈取り,その硝酸塩を定量した.その含量は全般に少なく乾物中KNO<sub>3</sub>として2%以下であり,生育に伴う変化もそれほど著しくはなかつた.しかし全期間を通して青刈コムギの硝酸塩含量は他の3種のそれより少なく,つねに1/2程度であつた.またコムギを除いて他の3種の作物の硝酸塩含量は刈取期ごとに異なつていたので,いずれが,より硝酸塩を蓄積しやすいということはなかつたが,出穂期にはオオムギにやや多くの硝酸塩が含まれており,乾物中KNO<sub>3</sub>として1.08%であつた.第2試験では夏の青刈飼料としてトウモロコシ,ソルガム,テオシントを用い1965年8月24日から約8日目ごとに5回刈取り,さらに出穂期にも刈取つてその硝酸塩を定量した.本試験では生育の初期に40日余り降雨がなかつたので,最初の2回の刈取期には硝酸塩含量はいくぶん少なかつたが,そののち雨が降ると非常に高くなり,乾物中KNO<sub>3</sub>として5%以上となつていた.しかしその後は生育期が進むにつれて減少し,出穂期ごろには1%前後であつた.つぎに草種による差異をみると,全期間にわたつて硝酸塩含量がつねに高いものはなかつたが,生育の後期にはソルガムにやや硝酸塩が多いようであつた.第3試験では青刈トウモロコシ10系統を用い,1965年6月22日から約7日目ごとに5回刈取り,さらに出穂期にも刈取つてその硝酸塩を定量した.まず青刈トウモロコシの硝酸塩含量は刈取期が早いときには乾物中KNO3として6~10%も含まれていたが,生育期が進むにつれて激減し,ふつう青刈飼料として用いる程度に生育したものではその硝酸塩含量は大低の場合1.5%以下であつた.つぎに系統による差異をみると,各刈取期ごとに硝酸塩を多く含むものとそうでないものと量あつた.そして生育期のはじめごろには系統間の差異は大きいようであつた.これら3つの試験において,青刈飼料作物の硝酸塩含量は環境条件によりかなり影響されるようにみうけられた.したがつて硝酸塩を多く蓄積しない作物をみつけていくには,草種,系統による硝酸塩蓄積の差異を知ることは大切であるが,硝酸塩蓄積に大きな影響を及ぼす環境条件を知ることも大切であろうと推察された.
著者
石田 元彦 福井 憲二 長尾 伸一郎 宮崎 昭 川島 良治
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.116-122, 1987-02-25 (Released:2010-11-26)
参考文献数
10

異なる給与飼料条件で飼育された牛が排出した糞の化学成分組成と栄養価を比較, 検討した。青刈トウモロコシ・ソルゴー20kgとふすま1kg (1日1頭あたりの原物重量) を給与された黒毛和種繁殖雌牛の糞, 稲わら1kgと配合飼料9kgを給与された肥育中のホルスタイン種去勢牛の糞 (肥育牛糞A), 稲わらを自由採食, 配合飼料を8kg給与された肥育中のホルスタイン種去勢牛の糞 (肥育牛糞B) および牧草サイレージ, ウイスキー粕, 稲わら等から成る粗飼料を24kg, 配合飼料を9kg給与された泌乳牛の糞をそれぞれ採取し, 60-90℃で通風乾燥したものを供試した。牛糞の化学成分は酸素分析を中心にした分析法で求めた.可消化粗蛋白質 (DCP) と可消化養分総量 (TDN) の含量および細胞内容物 (CC) と細胞壁構成物質 (CW) 画分のみかけの消化率をあん羊を用いた消化試験によって測定した。肥育牛の糞には繁殖牛糞に比べて, CC, “CC内粗蛋白質”とデンプンが多く含まれていた. CW中のリグニン含量は肥育牛糞と泌乳牛糞の方が繁殖牛糞よりも低かった. DCP含量 (乾物%) は肥育牛糞A, 肥育牛糞B, 泌乳牛糞がそれぞれ7.6, 6.8, 5.8で, 繁殖牛糞の3.1よりも高かった。TDN含量 (乾物%) は肥育牛糞A, 肥育牛糞B, 泌乳牛糞がそれぞれ51.2, 40.2, 37.9で, 繁殖牛糞の17.7よりも高かった. 消化率の測定結果から, 牛糞中のCC画分はめん羊によってほぼ完全に消化され, 牛糞中粗蛋白質 (CP) は酸素分析によって消化性の高い“CC内CP”と消化性の非常に低い“CW内CP”とに分けられると推定した. また, 牛糞のCW画分の真の消化率は供試した牛糞ごとに異なることが示唆された. 以上の結果から, 牛糞の栄養価は給与飼料の飼料組成や飼料摂取量によってかなり大きく変動することがわかった.