著者
志沢 雅彦 磯 俊樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.261-269, 1995-02-25
参考文献数
24
被引用文献数
1

多重スケール局所微分フィルタの集合から,各点に複数の方向性をもつ多重方向場を検出するための基礎理論を提案する.異なる指向性をもつ多数のフィルタを用いる従来法や,Freeman & Adelsonの可操舵フィルタ(Steerable Filter)と異なり,本理論では,多重方向場を1個の基本拘束方程式で表現する.従来法において必要であった,出力の大きい指向性フィルタの選択処理は不要である.可操舵フィルタにおける出力の極大値探索も不要である.その代わり,多重方向を陽に求める解析解が導出される.本理論は,演算子形式の線形重ね合せの原理から導かれる.従来法においては,複数の方向性信号成分が,個々のフィルタの検出方向範囲内にある場合に,信号間の干渉作用の悪影響を受ける.そのため,鋭い指向性をもつフィルタが必要であった.本理論から導かれるアルゴリズムは,この干渉作用に影響されない.アルゴリズムを用いると,画像の多重スケール表現において,交差などの特徴的画像構造を低次の輝度微分情報から抽出できる.本理論は,脳内の1次視覚野のハイパコラム構造における多重スケール・多重方向画像表現に新たな理論的基礎を与えると期待される.