著者
志茂山 貞二 小合 龍夫 笹井 一男
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.3, pp.31-45, 1953-09

筆者等は水稲の出穂6日前,出穂始,開花期,開花後5日及び開花後10日の5時期に風害及び風雨害を与へて之が水稲の生育特に子実の発育に及ぼす影響を調査し,次の結果を得た. (1)実験は風速15~17m/secの人口風洞内に於て行はれ,雨風処理の場合には更に80mm/hの雨量に相当する撒水を行つた. (2)処理開始直後株附近の気温は外気温より1.0~1.2℃降下したがその後は余り変化しなかつた. (3)処理に依つて株はすべて倒伏し,葉先は細裂し,穂は擦傷を蒙つた.穂の擦傷部は1~2日後褐変し,著しいものは黒褐色乃至灰白色に変じた. (4)黄色乃至黄褐色の籾には完全粒が高かつたが,黄褐色乃至褐色の籾は不完全粒となり褐色乃至黒褐色或は灰白色の籾はすべて粃であつた. (5)籾の擦傷は開花期に近いものほど大きく変色の程度も著しかつたが,雨を伴えばその被害は著しく軽減された. (6)穂重は処理時期別の差が顕著でなかつたが,開花期のものは明らかに軽かつた. (7)穂上粒着位置別に調査した結果に於ては不完全粒歩合は処理期の遅いものほど高く粃歩合は開花期処理のものが最高であつた.尚降雨は被害軽減に効果があつた. (8)開花期別の粒の調査によれば開花当日処理のものは被害が最大で5日以内のものも被害が大きかつた。