著者
志貴 知彰 佐竹 將宏
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0467, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】理学療法では階段昇降練習をよく行うが、昇降パターンや段数の違いによって、運動強度は容易に変化するといわれている。本研究の目的は、階段を連続して昇降したときの、酸素摂取量(以下V(dot)O2)、心拍数(以下HR)、自覚的運動強度が、下肢の昇降パターンと往復階数の違いからどのような変化を示すかを比較検討することである。【方法】対象は健常成人10名(男性7名、女性3名)で、平均年齢は27.0±5.8歳であった。階段は段差16cm、22段/階を使用し、ステップ数を80steps/minと一定にして、それぞれの条件で7分間の連続階段昇降を行った。その時のV(dot)O2とHRを携帯型呼気ガス代謝モニターを用いて測定し、また、昇段および降段毎の息切れ・下肢疲労を修正ボルグスケールにて記録した。階段昇降の条件は、下肢の昇降パターンを一足一段(以下A)と二足一段(以下B)とし、それぞれで一階・二階・三階の往復を行った。【結果】最高V(dot)O2(ml/min/kg)は、A-1階:14.9±1.6、A-2階:17.0±2.4、A-3階:17.9±3.2、B-1階:11.3±2.5、B-2階:13.3±1.8、B-3階:15.1±2.0を示し、各条件間で有意差がみられた。HR(bpm)は、A-1階:107.6±12.5、A-2階:121.3±12.7、A-3階:121.3±11.0、B-1階:103.0±14.0、B-2階:108.0±11.8、B-3階:107.7±13.7を示し、AとBおよび一階と二階との往復の間で有意差がみられた。息切れと下肢疲労については、A-3階:息切れ2.7(下肢疲労2.3)、B-3階:1.3(2.4)で、AとBでは有意差がみられた。経時的変化については、V(dot)O2とHRともに昇段では増加し、降段では減少する傾向がみられた。また、昇段では一定の値(ほぼ最高値)まで増加し、降段では一定の値まで減少する現象を繰り返した。この上下するサイクルはほぼ昇段および降段に要する時間で繰り返されていた。息切れ・下肢疲労ともに、昇段では増加を示し、降段では変化しないか減少した。【考察】本研究でのMets数は、最低で3.2Mets、最高で5.1Metsであった。この結果から階段昇降は中等度の運動強度であるといえる。また、下肢の昇降パターンと往復階数を変えることで運動強度を変えることができると考えられた。V(dot)O2、HR、息切れ、下肢疲労の経時的変化をみると、昇段では増加し、降段では減少する傾向がみられた。これは、階段の昇段時には求心性収縮を、降段時には遠心性収縮を繰り返す運動であり、遠心性収縮の少ない酸素摂取量で大きな張力を発揮できる特徴をよく表していると考えられた。この降段時の遠心性収縮の特徴を利用することで、運動耐容能の低下した患者などへの下肢トレーニングにも利用できる可能性が示唆された。