著者
鳥羽 美奈子 櫻井 隆雄 森 靖英 恵木 正史
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.71-79, 2016-01-15

知的作業に従事するオフィスワーカの生産性向上が注目を集める昨今,オフィスワーカを対象としたライフログ研究が盛んである.一方,オフィスワーカの業務状況とストレスの関係もまた,社会的に注目を集めている.ストレスは生産性に高い影響を与えると考えられるにもかかわらず,業務を中断させずにストレスを評価することはこれまで困難だった.本研究では,ストレス量を示す既知指標である被験者の生理量(唾液アミラーゼ分泌量)を目的変数,PC 操作ログの特徴量を説明変数として重回帰分析を実施し,ストレス量とPC 操作の関係を明らかにする手法を提案する.被験者10人延べ300時間の実業務を対象に実験を行った結果,重相関係数が0.6を上回る被験者が67%となり,ストレス量とPC操作ログ特徴量に関係があることが明らかになった.また被験者ごとに,ストレス量に関係の深いPC操作や,PC 操作がストレス量に反映されやすい時間範囲があることが分かった.これより,オフィスワーカに負担をかけることなくPC操作ログからストレス量を推測するサービスを実現する見通しを得た.
著者
恵木 正史
出版者
日本セキュリティ・マネジメント学会
雑誌
日本セキュリティ・マネジメント学会誌 (ISSN:13436619)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.20-27, 2020 (Released:2020-08-16)
参考文献数
30
被引用文献数
2

深層学習モデルを代表とした機械学習技術の進展に伴い,その活用範囲が急速に広がり,人命や財産に関わる重要な意思決定に使うニーズが増大している.しかし,深層学習モデルなどの機械学習モデルは高度に複雑な構造物であり,人がその動作の全容を把握するのは困難であるため,実質的なブラックボックスとなっている.そのため,機械学習モデルの予測結果を安心して業務に使えないという問題が生じている.そこで,近年機械学習モデルの予測根拠を説明するXAI(eXplainable AI)技術の研究が急速に進み,多種多様な技術へと発展している.XAI技術は大きく,既存の機械学習モデルを説明する技術であるブラックボックス型と,学習過程や構造が人にとって解釈可能な新型の機械学習モデルであるトランスペアレント型とに大別される.本稿では,研究の進展が著しく,汎用性の高いブラックボックス型にフォーカスする. ブラックボックス型も説明の種別や,対象とする機械学習モデルの種別に応じて多種多様な技術が提案されている.本稿ではそれらを体系的に整理して俯瞰すると共に,近年のXAI技術を理解する上で欠かせない2つの代表的な技術,すなわち,Shapley値とInfluence Functionについて解説する.さらに,これらのXAI技術を悪用すれば,新たな攻撃のリスクとなりうる点について述べる.
著者
恵木 正史 間瀬 正啓 濱本 真生
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.e31-e36, 2022-07-15

XAI(eXplainable AI)技術の中でもデファクトの1つとなっているShapley値による説明方法について,その使いこなしのポイントを概観する.また,実案件への適用の過程で我々が遭遇したShapley法の2つの課題とその解決策について述べる.いずれもAIおよびXAIの信頼性にかかわる課題であり,現場から信頼されるAIを実現する上で重要な論点になると考えられる.
著者
鳥羽 美奈子 恵木 正史 櫻井 隆雄 森 靖英
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2010-GN-76, no.4, pp.1-8, 2010-05-13

知的作業に従事するオフィスワーカーの生産性向上が大きな注目を集める昨今,生産性とオフィスワーカーが受けるストレスの関係もまた強い注目を集めている.ストレスが低いほど生産性が高いとは限らず,また業務を中断させずにストレスを評価する方法はなかった.そこで本報告では,オフィスワーカーの業務を中断することなく,生産効率とストレスの関係を定量化する方法を提案する.PC 操作ログから抽出した特徴量を 5 種類検討し,被験者 10 人延べ 300 時間の実業務を対象に実験を行った結果,キーストロークの特徴量を利用した指標と被験者のストレスを示す生理量に最大 0.90 の高い相関があることがわかった.これにより提案指標が妥当であり,生産性とストレスの関係評価を提示するオフィスワーカーのメンタルヘルスケアに有効なシステムの実装が可能となる見通しを得た.