著者
應本 昌樹
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.640, pp.640_125-639_154, 2018-03-31 (Released:2018-11-21)
参考文献数
30

権利保護保険を巡る規範的問題の一つとして,弁護士選任の問題を採り上げ,わが国における現在の保険実務の適否につき,欧州,とりわけドイツを念頭に置いた比較法的アプローチを採り入れつつ,保険契約法,とりわけ保険約款の不当条項規制,さらには弁護士法,とりわけ弁護士法72条本文後段による有償斡旋の禁止の枠組みにおいて検討した。その結果,被保険者による弁護士選択に対し保険者の影響力を及ぼし得る約款条項は,文言どおりの効力を認めることはできず,限定的に解釈されなければならないことや,権利保護保険の引受保険会社による弁護士紹介実務は,査定担当者などが協力関係にある特定の弁護士などを被保険者に紹介しているものである限り,弁護士法72条本文後段の定める報酬目的に業として行う法律事務の取扱いの周旋にあたり,同法に抵触する可能性があることなどが確認された。