著者
森川 洋 成 俊〓
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.95-114, 1985-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
15

定期市研究では市場の制度や移動商人の研究が中心をなしてきたが,利用者に関する研究も必要である.特に,都市システムの発達した韓国の定期市は低次中心地として利用されており,中心地としてとらえられる. 忠清南道公州付近の定期市に関する前回の調査では,定期市は生活必需品の分配と農畜産物の集荷の両機能をもつもので,周辺地域に居住する農民によって支えられているとしたが,本研究においてもほぼ同様の結論を得た.すなわち,ソウル市の南東50~100kmにある本地域では,定期市の訪問回数は専業農家よりもその近くに住む農家の方が多いが,定期市滞在時間では農畜産物の販売をかねた専業農家の方が長く,農家の生活にとっては重要な役割を果しているものと考えられる. 日本の低次中心地でも,第2次大戦前には農畜産物の集荷機能をもち,低次中心地としての機能は類似したものであった.ただし,日本では都市化の過程で早期に低次中心地が衰退したのに対して,日本統治時代の韓国では農村は旧態依然とした姿をとどめたままで都市化が進行し,伝統的な低次中心地が長く存続してきたものと考えられる. しかし最近10年間には定期市の利用は著しく減少しており,廃市後の集落にもサービス施設が設置され,新しい中心地システムが形成されつつある.本地域では今日人口流出が増加し,また住民の生活圏も拡大しており,定期市や低次中心地は将来深刻な打撃を受けることが予想される。 なお,本研究は昭和58~59年度文部省科学研究費「韓国における中心地システムと定期市」;課題番号:一般研究(C)58580180の補助を受けている.