著者
瀧川 穣 松田 圭央 尾之内 誠基 戸倉 英之 平畑 忍 高橋 孝行 藤崎 眞人
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.029-032, 2018-01-31 (Released:2018-09-21)
参考文献数
12

症例は30歳女性,銃で撃たれ当院救命センターに搬送された。来院時意識は清明で循環動態は安定していた。左右上腕,左前胸部に貫通射創,右側胸部は盲管射創を認めた。CTで横行結腸近傍に銃弾と考えられる金属片が存在し,また右肺,肝臓,脾臓の損傷,消化管穿孔を疑う腹腔内遊離ガス像,腹腔内出血,右血気胸を認めた。緊急開腹術で横隔膜,肝,脾損傷を認め縫合止血,胃壁に挫創を認め穿孔部位と判断した。銃弾を検索したが不明で,術中腹部X線で確認できず,胸部X線を撮影すると下縦隔に銃弾を認めた。食道内の可能性を考慮し,内視鏡を施行すると下部食道に銃弾を確認でき,内視鏡で胃内に押し込み胃壁損傷部位より摘出した。今回われわれは,胸腹部銃創で術前には腹部に存在した銃弾が胸部食道内に移動した症例を経験した。消化管内の銃弾は手術操作などで容易に移動する可能性があり,X線の併用など工夫が必要と考えられた。