著者
戸田 裕子 桜谷 保之
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.798, 2005 (Released:2005-03-17)

ハイイロテントウは1987年に沖縄県恩納村で発見されて以来、分布を拡大し、現在では沖縄県のほぼ全域に生息している。北アメリカ原産のテントウムシで、外来種と考えられている。主な生息場所は外来植物ギンネム上で、それに発生する外来種ギンネムキジラミを捕食することが知られている。本研究では沖縄におけるハイイロテントウを中心としたこうした外来種同士の食物連鎖や在来捕食性テントウムシとのギルド関係の調査と、食性を明らかにするための飼育実験を行った。沖縄本島の数箇所で、年に数回ギンネム、ハイビスカスを中心にハイイロテントウや在来テントウムシを調査した。ギンネムにおいてはハイイロテントウがみられた場所では在来種ダンダラテントウなどに対して優占種であったが、ハイビスカスではダンダラテントウが優占種で、ハイイロテントウはほとんど生息が認められなかった。テントウムシ類は成虫で越夏や越冬をする種が多いが、ハイイロテントウ成虫も8月の調査では樹木の葉の重なり内で越夏していた。ハイイロテントウはギンネムキジラミのみを利用しているスペシャリストと考えられるが、11月には少数ながらハイビスカスでもアブラムシを捕食している成虫が観察された。飼育は25℃14L10Dの条件下で行った。餌としてギシギシアブラムシ、ナシミドリオオアブラムシ、サツマキジラミ、ヤマトキジラミを与えた。アブラムシ類を与えたものは成虫でも数日で死亡し、孵化した幼虫では2日ほどで全滅した。キジラミ類を与えた場合はある程度の生存率で幼虫も発育した。このようにハイイロテントウは餌のギンネムキジラミとともにスペシャリスト的で、侵入地で3段階の食物連鎖を構成しながら、在来種との種間関係を生じていることが明らかになった。
著者
戸田 裕子 桜谷 保之
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.186, 2004 (Released:2004-07-30)

フタモンテントウ(〈I〉Adalia bipunctata〈/I〉)は、1993年に大阪市南港において日本で初めて発見され、外来種と考えられている。1993年以降これまで発見地を中心に継続的に調査を行ってきた。本研究では発見地および周辺の公園・緑地等において、侵入後の分布や生活史、在来テントウムシとの種間関係を調査した。分布については、最初の発見地である南港中央公園(350m×500m)において発見以来ほぼ毎年発生が確認されているが、他の場所では2001年まで発生がみられず、分布の拡大は起こっていないと考えられた。しかし、2002年には2から3kmほど離れた2ヶ所で発生がみられるようになり、2003年には新たに2ヶ所で分布が確認された。2004年には南港地区(約3km四方)のほとんどの調査地で発生が確認され、南港以外の大阪府内や、約20km離れた兵庫県神戸市でも発生が確認された。発生密度は南港中央公園で最も高く、そこから離れるに従って減少する傾向にあった。したがって、南港中央公園が最初の侵入地で、発生の中心と推察された。この2から3年で分布がかなり広がり、さらに飛び火的に拡大する傾向にあると考えられる。種間関係については、フタモンテントウと同じ樹上(シャリンバイやトウカエデ)に生息する在来種ナミテントウとの個体数関係を中心に調べた。その結果、フタモンテントウの生息密度が高い地域の方が低い地域よりもナミテントウの個体数の割合が低い傾向がみられ、フタモンテントウの個体数増加や分布拡大はナミテントウやダンダラテントウ等、在来テントウムシの生存に影響を与えつつあると推察される。