著者
千葉 直久 富岡 泰章 戸矢崎 利也 上田 雄一郎 後藤 正司 中川 達雄
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.834-839, 2016-11-15 (Released:2016-11-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

肺切除術の際に過分葉を認めることが時にあるが,不全分葉であることが多い.今回,上舌区域間に明瞭な過分葉を認めた症例に対して区域切除を行った2例を経験したので報告する.症例1は57歳男性.左S1+2の肺癌に対して,胸腔鏡下上区域切除術を施行した.上舌区域間に明瞭な過分葉を認め,肺動脈は上葉支の腹側を走行し,B1+2+3が独立して分岐する転位気管支を認めた.症例2は80歳女性.左舌区の肺癌に対して,胸腔鏡下左舌区域切除を施行した.左上舌区域間に明瞭な過分葉を認め,共通肺静脈幹を認める以外,分岐異常は認めなかった.術後経過は共に良好で,現在まで無再発生存中である.過分葉を認める肺癌手術症例について,文献的考察を交え報告する.
著者
山本 恭通 戸矢崎 利也 小阪 真二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.46-51, 2017-01-15 (Released:2017-01-15)
参考文献数
5

症例は63歳女性.左上下肢ミオクローヌスと歩行障害で緊急入院となった.頭部MRI上大脳皮質と皮質下に10日間で拡大するびまん性のT2高信号域を認めた.胸部CTで胸腺腫を疑う腫瘤影を認め,抗アセチルコリン受容体抗体が高値を示した.ステロイドパルス療法後に漸減療法を行ったが,失語,筋力低下,痴呆症状など神経症状と脳機能低下は急速に進行した.寝たきりとなり下肢静脈血栓症を併発した.傍腫瘍性神経症候群と診断し入院31日後に拡大胸腺摘出術を行った.胸腺腫Type ABでWHO分類pT1N0M0 I期,正岡分類I期であった.術後神経症状や脳機能低下は劇的に改善し術後32日に独歩退院した.比較的急速に進行する傍腫瘍性神経症候群は胸腺腫などの腫瘍と神経組織に共通する抗原に対する自己免疫が原因といわれ,悪化する神経精神症状に躊躇することなく胸腺腫に対する早期の外科治療が必要である.