著者
小阪 真二 宮本 信昭
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.745-748, 1997-09-15
参考文献数
14
被引用文献数
1

縦隔リンパ管腫は,縦隔腫瘍の中でもまれな疾患である.左大動脈弓下に発生した縦隔リンパ管腫の1例を経験した.症例は57歳男性,咳嗽を主訴に当科受診,胸部CT撮影にて,左中縦隔に鉄アレイ状の腫瘤影を認め,良性もしくは悪性縦隔腫瘍の疑いにて手術を施行した.腫瘍は,前方に充実性の部分,後方に嚢胞性の部分をもつ嚢状リンパ管腫であり,容易に切除可能であった.縦隔リンパ管腫の報告例はほとんどが単房性もしくは多房性の嚢状リンパ管腫であり,自験例のように海綿状リンパ管腫の成分を含むものは,本邦において自験例を含め8例にすぎない.治療法は,外科的切除が一般的である.部分切除例には再発の報告があり,可能な限り全摘除を心がけるべきと考えられる.
著者
松倉 規 小阪 真二 國澤 進 澁谷 祐一 岡林 孝弘
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.933-937, 2006-11-15 (Released:2008-11-04)
参考文献数
12

著明な好中球減少を伴う急性骨髄性白血病の治療前精査で胸部異常影を認め,手術にて肺非定型抗酸菌症と診断された症例を報告する.症例は55歳,男性.急性骨髄性白血病で血液内科入院中に左上肺野の腫瘤影を指摘された.気管支鏡検査では確定診断は得られなかった.画像上は肺癌や肺結核,肺真菌症などの感染症が疑われた.術前血液検査で白血球数1460/μl,好中球数226/μlと好中球減少が著明であった.白血病治療を早期に開始する必要があり手術を行った.術中針吸引にて肺非定型抗酸菌症と診断され左上区切除術を行った.術後G-CSFは使用せず,抗生物質はパニペネムと硫酸アミカシンの2剤を投与した.術後肺炎や創部感染などの合併症なく良好に経過した.
著者
阪本 仁 小阪 真二 土屋 恭子
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.928-931, 2009-11-15 (Released:2010-01-28)
参考文献数
10

1999年3月から2008年9月までに新生児気胸と診断された50症例を検討した.男児が33例,女児が17例であった.病側は左側が14例,右側が23例,両側13例であった.超未熟児が2例,極小未熟児が3例,低出生体重児が10例,巨大児が1例で,他の34例は正常体重であった.早期産が15例,正期産は35例で過期産はなかった.発症日齢は日齢0が31例で最も多かった.肺基礎疾患は胎便吸引症候群が17例,呼吸窮迫症候群が13例,新生児一過性多呼吸が12例,肺低形成が4例であった.気胸発症前に呼吸器管理を受けた症例が24例であった.治療は胸腔ドレナージが13例(2例が両側),胸腔穿刺が2例,高濃度酸素療法が4例であった.気胸の転帰は46例が軽快で,4例が死亡であった.胸腔ドレナージを施行した13例のうち早期産が10例,気胸発症前に呼吸器管理を受けた症例が12例で,それぞれ正期産,発症前に呼吸管理を受けなかった症例と比べて有意に頻度が高かった.死亡例4例のうち早期産が3例,気胸発症前に呼吸器管理を受けた症例が4例で,死亡例全例に肺基礎疾患を認めた.早期産および気胸発症前に呼吸器管理を受けた症例において積極的な胸腔ドレナージの適応と考えられた.
著者
阪本 仁 小阪 真二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.917-921, 2007-01-15 (Released:2008-11-20)
参考文献数
8

症例は66歳女性.急性心筋梗塞に対して当院心臓外科にて冠動脈バイパス術を施行した.術後右血胸を認め,術後6日目に後側方第7肋間開胸にて血腫除去術を施行した.さらに右膿胸を認めたため31日目に開窓術(第6-9肋骨後方部分切除)を施行した.膿胸腔のガーゼ交換を連日継続中の94日目に大量の壊死肺(10×5cm)の自然脱落を認めた.その後229日目に有茎腹直筋弁充填術を形成外科医と共同で施行した.しかし,充填術後に肺瘻が遷延したため,計3回気管支塞栓術を行ったが一時的な改善しか認めなかった.275日目に開胸にて肺瘻閉鎖術を行った.腹直筋弁は形成外科的な手技が必要であるが,大網や広背筋が利用できない場合は膿胸腔充填術に対して有用である.また,膿胸開窓術後の大量の壊死肺脱落は今回検索し得た文献においては稀であると考えられた.
著者
山本 恭通 戸矢崎 利也 小阪 真二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.46-51, 2017-01-15 (Released:2017-01-15)
参考文献数
5

症例は63歳女性.左上下肢ミオクローヌスと歩行障害で緊急入院となった.頭部MRI上大脳皮質と皮質下に10日間で拡大するびまん性のT2高信号域を認めた.胸部CTで胸腺腫を疑う腫瘤影を認め,抗アセチルコリン受容体抗体が高値を示した.ステロイドパルス療法後に漸減療法を行ったが,失語,筋力低下,痴呆症状など神経症状と脳機能低下は急速に進行した.寝たきりとなり下肢静脈血栓症を併発した.傍腫瘍性神経症候群と診断し入院31日後に拡大胸腺摘出術を行った.胸腺腫Type ABでWHO分類pT1N0M0 I期,正岡分類I期であった.術後神経症状や脳機能低下は劇的に改善し術後32日に独歩退院した.比較的急速に進行する傍腫瘍性神経症候群は胸腺腫などの腫瘍と神経組織に共通する抗原に対する自己免疫が原因といわれ,悪化する神経精神症状に躊躇することなく胸腺腫に対する早期の外科治療が必要である.
著者
松村 栄久 三宅 淳史 石田 直 松井 保憲 石川 真也 池上 直行 松倉 規 小阪 真二 玉田 二郎
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.349-355, 1993-06-20
被引用文献数
4 2 1

肺癌における癌性髄膜炎の合併は極めて予後不良とされてきた1今回我々はこれに対しOmmaya reservoirを用いて治療した2症例を経験し,非使用5症例と比較検討を行った10mmaya reservoirを用いMethotrexateの脳室内注入を行った2例(腺癌)では,重篤な意識障害をきたさず,他の合併症が予後を決定した.一方非使用5例(腺癌3例,小細胞癌2例)では全例が短期問に意識障害を来たし,癌性髄膜炎が死因に直結した.癌性髄膜炎の診断後予後はOmmaya reservoir使用2例で各々168日,56日で,非使用5例の9〜21日(平均16日)に比べて延長が認められた.Ommaya reservoirに起因する明らかな合併症は認めなかった.自験7例の癌性髄膜炎の診断時には全例髄膜以外にも転移が生じていた.従って,これらの病巣が落ち清いていれば,Ommaya reservoirを用いた局所的な髄膜播種の治療を積極的に考慮してよいと思われた.
著者
小阪 真二 片倉 浩理 金光 尚樹 水野 浩 和田 洋巳 人見 滋樹
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.44-48, 2000-01-15
被引用文献数
4 2

胸腺嚢踵の壁に胸腺腫を合併した希な症例を経験した.症例は28歳男性で, 健康診断にて胸部異常影を指摘された.胸部レントゲソ写真にて心陰影の左側に重なる腫瘤影を認め, 胸部CTにて前縦隔の嚢腫様陰影とその壁に一部充実性の腫瘤影を認めた.胸骨正中切開にて腫瘤を切除したところ多房性の胸腺嚢腫の壁に胸腺腫を合併していた.胸腺嚢腫に胸腺腫を合併した症例は本邦11例目の報告であった.前胸部の嚢腫で胸腺嚢腫が疑われる場合, 悪性腫瘍の合併, 嚢胞性胸腺腫なども考慮に入れ, 慎重に切除することが大切と考えられた.