著者
扇野 綾子 中村 由美子
出版者
一般社団法人 日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.1-9, 2014 (Released:2016-12-09)
参考文献数
19
被引用文献数
3

本研究の目的は、慢性疾患患児を育てる母親の心理的適応の構造の特徴について明らかにすることである。 病児の母親247名と健康児の母親332名を対象に、自記式質問紙調査を行った。心理的適応に関連する要因として精神的健康度、コーピング、レジリエンスを測定し、分析は記述統計と平均値の差の検定の後、共分散構造分析を用い母親の心理的適応モデルを作成した。 各尺度の得点を比較した結果、病児の母親は健康児の母親に比べて精神的健康度が低く、レジリエンスの 「I AM」 「I WILL/DO」、コーピングの 「肯定的解釈」 が有意に低かった。共分散構造モデルについて、子どもの疾患の有無による多母集団の同時分析を行った結果、病児の母親の心理的適応を構成する要因では 「自信」 の影響が大きく、『柔軟な力』を構成する 「楽観視」 と 「こころのゆとり」 のパス係数が高かった。 これらの結果より、病児の母親に対しては育児を承認し、長期的な視点をもち関わるなど支援の方向性の示唆が得られた。