- 著者
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青柳 育夫
手塚 マサ子
中村 和夫
- 出版者
- 日本陸水学会
- 雑誌
- 陸水学雑誌
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.2, pp.185-198, 1998
- 被引用文献数
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4
茨城県下の鬼怒川下流域において,アカツキシロカゲロウEphoron eophilum ISHIWATAに関する野外調査を実施した。同所にはオオシロカゲロウE. shigae(TAKAHASHI)も生息する。両種の卵を実験室内において孵化させ,若齢幼虫の形態比較を行った。<BR>1)アカツキシロカゲロウは年1化性で,越冬した卵は4月から7月にわたって孵化し,成体は7月から10月にかけて羽化・産卵した。短期間に同調的な孵化および羽化がおこるオオシロカゲロウと比較すると孵化および羽化とも長期間に及んだ。2)アカツキシロカゲロウの羽化・産卵は日の出前後におこり,日没直後に行われるオオシロカゲロウの羽化・産卵とは明確に分離していた。3)アカツキシロカゲロウの卵はオオシロカゲロウより体積で約4倍大きく,1齢から5齢幼虫は同一齢のオオシロカゲロウより大型で,特に大顎牙が1齢の時期からよく発達していた。4)大卵少産型のアカツキシロカゲロウは幼虫が粘土質の河床に生息しており,小卵多産型のオオシロカゲロウの幼虫は砂礫質や砂泥質の河床に生息、している。アカツキシロカゲロウの1齢幼虫の大顎牙は固い粘土質の河床での生息に適応した形態と考えられる。