著者
関沢 清久 手塚 光彦 福島 健泰
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

ヒスタミンN-メチルトランスフェラーゼ(HMT)活性がモルモット及び人において、鼻粘膜を含む気道全体に存在することを生化学的、遺伝子学的手法で明らかにし、その産生細胞が粘膜上皮と血管内皮に存在することをHMTmRNAを染色して同定した。HMT阻害剤により、人気道におけるヒスタミンに対する収縮反応が増強され、又モルモット気道においてヒスタミン及び抗原-抗体反応による気道収縮や毛細血管透過性亢進が増強され、気道におけるヒスタミンの分解が主にHMTで行こなわれていることが示された。モルモットで、センダイウイルスを経鼻的に投与し、ウイルス感染をおこすと、気道上皮の脱落と共にヒスタミン吸入による気道収縮反応が増強された。ウイルス感染モルモットでは、気道のHMT活性が正常の半分以下に低下し、HMT阻害剤による増強反応がみられないことより、以前から人で観察されていた。ウイルス感染後の気道過敏性亢進は、気道上皮傷害に伴うHMT活性の低下による可能性が示唆された。以上より、HMTが鼻アレルギー及び気管支喘息の病態と深く関係していることが示された。私達は以上の基礎的検討を基に、人の腎臓からRNAを抽出し、cDNAのライブラリーを作成し、ラットcDNAプローベを用いて、人HMT遺伝子をクローニングした。これより、リコンビナントHMTの作成が可能になり、気管支喘息及び鼻アレルギーの治療に応用し得ると共に、人の鼻及び気道でIn situハイブリダイゼーション法によるHMT産生細胞の精細な検討が可能となった。