著者
手塚 実
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

「学校嫌い」を理由に年間30日以上欠席した登校拒否(不登校)の小・中学生が、平成8年度には94,245人と過去最高を更新したことが文部省の学校基本調査(平成9年8月8日現在)によって明らかにされた。前年度より約13,000人増え、前年度に対する伸び幅は、調査開始時の平成3年度以降最も高く3倍に達した。この数は、中学生で60人に1人、小学生ではほぼ400人に1人とそれぞれ過去最多の割合である。学校に行かないという同じような現象でも、学校恐怖症のように、行かなくてはと思い前夜は登校の準備をしていても当日朝になると恐怖や不安で登校できないものと、一応の理屈をつけて行かないでいる登校拒否の病体ではその対処が異なったものでなければならないと考えられる。しかし、学校側はこの状況に対して半数が怠学・なまけと認識しており治療・教育上まだまだ大きな問題が残されている。また、学校に行かれない児童の環境(教師、友人、親、兄弟姉妹等)に対しても観察の目が行き届いているとは言いがたい。本研究ではこのような現実的な問題をふまえつつ、不登校児に対し療法的音楽教育を施しながらこの児童をとりまく周囲の人間関係にも注視し、以下の点(1.音楽教育者の立場から、学校教育の中で療法的音楽教育はどのような形で係わることが可能か。2学校教育の中で、比較的難治性の心身症児童に対して教育実習生は教師とどのような連携をとるべきか。3.言語的コミュニケーションが図れなくなった親子関係、師弟関係、友人関係等に対し言語的コミュニケーションを通して肯定的な対人関係を得るきっかけに音楽はなりうるか。4.啓豪活動を通して、地域住民の心と体の健康管理に音楽はどのような形で貢献できるか)を明らかにしようと試みた。その結果は報告書(別冊)に記載してある。