著者
手島 喜也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P3216, 2009

【目的】平成16年4月「健康寿命」の延伸を目標に、特に「一次予防(健康づくり)」と「介護予防」を大きな柱として、利用者が生涯にわたって自分らしく自立した暮らしができるよう、また健康や体力維持への意欲を高め、仲間づくり、生きがいづくりを目指す目的で「いきいきセンター」(以下当センター)がオープンした.健康づくり、ダイエット、退院後のリハビリ継続、介護予防など利用目的は様々である.平成20年9月末までの4年半の延べ利用者は47000人余りに達し、特に50代以上の利用者が約8割を占め、うち70代以上の利用者が2割を占めている.そこで今回、当センターでの利用継続し、直接調査した結果、若干の知見が得られたので報告する.<BR>【対象と方法】平成20年9月現在の時点で、介護予防目的の利用者は43名で、週2回以上の利用でかつ1年以上継続されている11名のうち定期的に評価でき、同意が得られた3名(70歳・71歳・89歳女性)を対象とした.方法は理学療法士の指導の下、当センターの運動機器にて運動を実施し、3ヶ月ごとにTimed Up&Go Test(以下TUG)を測定し、同時に生活状況を聞き取り調査した.<BR>【結果】1TUGに関しては3名とも開始から1年までは時間が短縮したが、その後はあまり変化がみられなかった.2生活状況は3名とも半年あたりから徐々に変化し始めた.(70歳女性 変形性股関節症)痛みが強く家での農作業までが精一杯だったが少しずつ外出への自信が高まり、今では地区の行事の参加はもちろん、1泊の旅行から、ウォーキング大会にも参加できるようになった.農作業、山仕事も積極的に行っている.(71歳女性 パーキンソン病 YahrのstageII)家での動きが少しずつ難しくなってきて、人前に出るのもおっくうになっていた.現在は周囲の協力もあり、友達との食事やカラオケに出かけたり、積極的に買い物、日帰り旅行にも行くようになった.(89歳女性 右大腿骨骨折 一人暮らし)当初からバスに乗っての来所は可能だったが、範囲は限定されていた.現在は1時間以上かかる娘宅まで一人でバスに乗って行ったり、演歌歌手のコンサートも行くようになった.<BR>【考察】今回の対象者が継続し、成果をあげることができた要因にある程度の能力は存在していたことに加え、正しい姿勢・リズム・低負荷での運動を継続することでの動作性の向上が図られ、それを日常生活に反映できたこと.それにより生活における体力の向上ができたことが推測される.しかしそれだけではなく他の利用者の存在が非常に大きかったと思われる.介助すべき場面とそうでない場面を私達の行動をみて自然と習得し、それにより特別な存在と見ることもなく自分たちと同じ利用者・住民という意識が浸透したように思われた.知り合いとなり楽しくお互いが運動、交流ができ、行動変化への自信がうまれた結果介護予防が図られたものと考える.